食べ物語

あめ色に煮込んだカキ  宮城・浦戸諸島の味  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2022.08.08

ツイート

あめ色に煮込んだカキ  宮城・浦戸諸島の味  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 日本三景の一つである宮城県・松島湾に浮かぶ浦戸諸島、250を超える島々で形成されているが、有人島は4島のみである。

 JR仙石線の本塩釜駅から徒歩10分で行ける「マリンゲート塩釜」から塩竃市営の定期船が運航しており、4島に渡ることができる。

 約23分の船旅で到着する最初の島が桂島、面積0.76平方㌔㍍に約170人が住む島である。島名の由来は、松尾芭蕉の弟子、河合曾良が松島湾に浮かぶ島と月を見て、「月桂冠のごとし」と詠んだことだといわれている。

 島の西側の桂島、東側の石浜の二つの集落があり、浦戸諸島では最も人口が多い。諸島で最も標高が高い津森山(61㍍)の頂上付近には、日照りの時に雨乞いをしたとされる「雨降石」という名所がある。

 桂島から約8分で到着する島が野々島、面積0.56平方㌔㍍に約70人が住んでいる。塩竃市の出先機関、漁協の支所、診療所、小中学校が存在し、浦戸諸島の行政の中心地となっている。

 野々島の名物は春に見頃を迎えるツバキのトンネルであるが、周辺には岩を削って造られた古道があり、野仏や祠などが点在している。

 野々島から約13分の位置にあるのが寒風沢島(さぶさわじま)、面積1.45平方㌔㍍、人口約100人の浦戸諸島最大の島である。

 江戸時代の狂歌師である大田南畝の随筆「半日閑話」には「寒澤島(さぶさわじま)」とあり、いつしか島名に「風」の一字が加わったとされている。

 江戸時代には荒天時の風待港、幕府への年貢米を千石船に積み替える積替港として繁栄した。1856年、仙台藩初の西洋式軍艦「開成丸」が建造され、「造艦の碑」が建っている。

 島の水田ではササニシキが栽培されており、それを使用した純米吟醸酒「寒風沢」が「浦霞」から発売されている。

 寒風沢島から約8分で到着するのが朴島、面積0.15平方㌔㍍、人口約20人で、塩竃市中心部から見て最も奥に位置する有人島である。

 島名の由来には諸説があるが、江戸時代に仙台藩の軍用金や宝物が隠されていたとされる「宝島伝説」という説がもっともらしい。純粋な仙台白菜の種を採るために島中で菜の花が栽培されており、毎年ゴールデンウイークの時期になると、見事な花が島全体を覆い尽くす。

 さて浦戸諸島の味についてご紹介したい。

 東日本大震災をきっかけとして浦戸諸島で養殖業を営む女性が出資して設立された「合同会社がんばる浦戸の母ちゃん会」が提供する「カキの佃煮」(写真)である。

 水揚げされたカキを一昼夜浄化させ、翌朝早くから10時間近くかけて殻をむき、丁寧に水洗いをしアクを取った後に特製のタレで強火で一気に炊き上げ、あめ色になるまで煮込むのである。

 カキが苦手という方でもおいしく食べていただける絶品に仕上げられている。通信販売もされているので、ぜひお試しいただきたい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年7月25日号掲載)

最新記事