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「海のギャング」を唐揚げで  伊豆諸島・神津島のウツボ  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2022.07.04

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「海のギャング」を唐揚げで  伊豆諸島・神津島のウツボ  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 神津島は東京都伊豆諸島の有人離島としては最も西にある島である。周辺の島も含め数十個の流紋岩質単成火山があり、「神津島火山群」を形成している。島の形はひょうたん形をしており、シンボル的な存在である天上山(標高572㍍)を中心とした北部と、秩父山のある南部とに大きく分けられる。

 天上山は838年に起きたとされる大規模な噴火で形成された溶岩ドームである。山頂部は比較的平坦で、「表砂漠」「裏砂漠」と呼ばれる砂地があり、また本州では2000㍍級の高山に生育している高山植物も見られる。

 島名の由来は、伊豆の島々を造るために神々を集めて話し合う場であったということであり、かつては「神集島」と書かれていた。神津島ならびに近海にある恩馳島では黒曜石が産出され、後期旧石器時代から石器の材料として採取され、本州に送られた。

 その流布範囲は広範にわたっており、東は東京都、西は静岡県西部、さらに内陸部の山梨県北杜市にまで達している。このことは同時に旧石器時代の人々が船を使っていたという証左でもある。

 神津島への交通アクセスであるが、竹芝桟橋から大型客船さるびあ丸で12時間、ジェット船セブンアイランドで最短3時間40分、調布空港から19人乗りのドルニエ機で45分となっている。

 島の観光スポットでは、まず前述の天上山が挙げられる。天上山の登山口は、黒島登山口と白島登山口の二つがあり、前者が急峻、後者が緩やかであるが、上りの所要時間はいずれも2時間弱程度である。山頂部を覆う特異な景観、花の百名山(NHK版)に列せられた高山植物群、そして山頂からの360度の眺望を十分に満喫するためには、5時間以上のトレッキングが必要であるといわれている。

 島の北部に位置する赤崎海岸に作られた全長約500㍍の赤崎遊歩道もお勧めである。自然の入り江に木造の橋や飛び込み台などが設置されており、シュノーケリングを楽しむこともできる。

 ちなみに、神津島全域が2020年12月に米国アリゾナ州に本部を有する国際ダークスカイ協会から「星空保護区」に認定されている。この「星空保護区」、世界で187地区が認定されているが、わが国では3カ所だけという貴重な存在である。

 ところで、近年全国の離島地域で積極的に進められている「離島留学」であるが、伊豆諸島で先鞭をつけたのは神津島である。正式には「島外生徒受入事業」というものであるが、2016年に募集を開始して現在7期目に入っており、累計20人の生徒を受け入れている。

 神津高校では同時に高校魅力化や大学との連携・接続などの事業にも取り組もうとしており、今後の動きに注目したいところである。

 さて、神津島の味であるが、きれいな海で育った天草と島の名水を使って作ったところてんが昔からの定番であるが、今回は「うつぼ」をご紹介したい。(写真:唐揚げ用のうつぼ=神津島観光協会)

 尖った口、鋭い歯、どう猛な姿から、「海のギャング」と呼ばれるうつぼ、見た目から食するには抵抗を感じる魚であるが、これを風干しした上で干物にして、素揚げにしたのが「うつぼの唐揚げ」ある。明らかに酒のさかなであるが、ごはんのお供としてもお勧めできるのではないだろうか。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年6月20日号掲載)

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