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明日に架ける橋  鹿児島県の獅子島  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2022.04.18

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明日に架ける橋  鹿児島県の獅子島  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 九州新幹線出水駅から車で約70分の位置にある諸浦島の諸浦港からカーフェリー「フェリーロザリオ」で20分、面積約17平方㌔に約700人が住んでいる獅子島は、鹿児島県最北端の有人離島である。

 獅子島へのアクセス方法は他にも天草市中田港からのフェリー(30分)と水俣港からの旅客船ししじま(30分)の2ルートが存在している。

 獅子島の最高地点は393㍍の七郎山だ。フェリーが到着する片側港の近くから舗装道路が整備されており、往復4時間弱、海抜ゼロメートルからの登山を楽しむことができる。室町時代、獅子島の領主は唐津藩士の子孫の獅子谷七郎であったと伝えられている。

 1565年に薩摩藩との戦いに敗れて島津家の領地となったが、島と山の名前は往年の領主にちなんで付けられたといわれている。

 獅子島の由来には当時の島には鹿が多く生息しており、一般に鹿のことを「シシ」と呼んでいたからという別の説も存在している。

 獅子島には、約1億年前ごろの白亜紀層(御所浦層群)をはじめ、古第三紀始新世までの地層がみられ、アンモナイトや三角貝、首長竜などの化石が見つかっている。

 こうしたことから、片側港には島の象徴としてクビナガリュウとアンモナイトのモニュメントが置かれている。

 島の観光名所としては先ほどの七郎山や化石関係の施設などが挙げられるが、筆者のおすすめは島の西部にある黒崎空中展望所である。

 ウッドチップが敷き詰められ、木の香りがする通路を、まるで浮いているかのように進んだ先の展望台からは、天草の島々や雲仙普賢岳などが一望できる。展望台からの夕陽も最高だといわれている。

 長島町で唯一、橋が架かっていない獅子島には、住民の悲願ともいうべき「獅子島架橋構想」がある。

 長島町では架橋の事業化に向けて2012年度から「夢追い獅子島架橋基金」への積み立てを開始している。

 同町のふるさと納税による寄付金の使途にも架橋基金が掲記されている。さらに、架橋整備後の島内交通を見据えて、獅子島一周林道を県道に昇格する陳情が町議会で採択されるなど動きが活発になってきている。

 獅子島の周囲はリアス式海岸となっており、周辺海域で漁獲される水産物に加えて、その地形を生かして、ブリ、タイ、ヒラメ、アオサなどが養殖されている。(写真:獅子島のブリ、刺し身でもしゃぶしゃぶでも)

 気候が穏やかで潮風の当たる獅子島は、上質なかんきつの育成に最適であり、特に紅甘夏は絶品であるといわれている。ほかにバレイショなども栽培されている。

 さて、今回は島の活性化に尽力されている人、「株式会社島のごちそう」の山下城代表をご紹介したい。

 漁業者の家系に生まれ中学卒業後島を離れたが、3年前にUターンし、水産物をはじめとする1次産品の加工・販売から観光事業まで手掛けている。架橋構想の先行きとあわせて、将来が楽しみな存在である。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年4月4日号掲載)

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