食べ物語

刺し身がおいしい剣先イカ  「春一番」発祥の地・壱岐島  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2021.11.22

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刺し身がおいしい剣先イカ  「春一番」発祥の地・壱岐島  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 長崎県壱岐島(いきのしま)は東松浦半島から北北西約20㌔の玄界灘上に位置しており、さらに北西の海上には対馬島がある。壱岐島は南北17㌔、東西14㌔の大きさであり、面積は133.8平方㌔となっている。

 航路の距離は、博多港から郷ノ浦港までが約74㌔、呼子港から印通寺港までが約26㌔である。海岸線は入り組んでおり、その長さは167.5㌔に達する。島内にそれほど高い山はなく、南端部の岳ノ辻の212.8㍍が最高峰だ。

 壱岐島には縄文時代から人が居住していた形跡が見られ、古墳なども現存している。弥生時代には、ほぼ全島に人々が住んだと考えられており、原の辻などの遺跡も比較的規模が大きく、遺物も豊富に残されている。暖流の対馬海流が対馬海峡を流れる影響もあり、気候は比較的温暖である。

 春先に吹く強い南風のことで、今では気象用語として頻繁に用いられる「春一番」の発祥の地は壱岐であり、郷ノ浦港に「春一番の塔」が立てられている。

 手つかずの自然が残り、古代人の息吹も感じる神秘の島といわれる壱岐島は観光名所も豊富に存在。猿岩、辰ノ島、左京鼻(はらほげ地蔵)、月讀神社、原の辻遺跡など枚挙にいとまがない。

 しかし、筆者としては、別に名前が同じだからというわけではないが、島の東側の内海湾に浮かぶパワースポット「小島神社」を一番にお勧めしたい。干潮時にのみ現れる参道の様は、さながらフランスのモンサンミッシェルをほうふつとさせ、天童よしみの「珍島物語」の歌詞を目に浮かばせる不思議な光景であるといえる。

 さて壱岐島の味覚に移りたいが、これが非常に難しい。壱岐島は知る人ぞ知る「自給自足が可能な島」だからである。まず長崎県内2番目の面積を誇る平地で収穫される壱岐米、松坂牛や神戸牛などに向けた子牛生産に端を発した壱岐牛、東の大間、西の壱岐と並び称されるマグロ、その他の水産物や青果は数知れない。ついでながら壱岐は麦焼酎発祥の地であり、世界的に認められたブランドとなっている。

 そういう味覚の宝庫である壱岐島にあって、今回筆者がご紹介したいのが「剣先イカ」(写真)である。壱岐島の周辺は、水温や潮まわり、海底の砂地といった自然条件に恵まれていることから、大型の剣先イカが春から初夏にかけて産卵のために来遊する。勝本漁港の剣先イカ釣り漁はこの時期の夜に行われ、漁獲された極上の剣先イカは「壱岐剣」のブランド名で全国的に珍重されている。

 イカは生の場合、重量の多くが水分で、脂肪はほとんどなく、良質のタンパク質を含んでいる。コレステロールは多めであるが、アミノ酸の一種であるタウリンが豊富に含まれている。内臓にもエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれているため、近年はやりのヘルシー食品ともなっている。

 特に剣先イカは、身が厚くて柔らかく、甘みが強いのが特徴であり、刺し身で食べると格別おいしい。アフターコロナの来春あたりにお勧めしたい逸品である。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年11月8日号掲載)

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