食べ物語

糖質、カロリー控えめで人気  オートミール、レシピも多様に  畑中三応子 食文化研究家

2021.11.01

糖質、カロリー控えめで人気  オートミール、レシピも多様に  畑中三応子 食文化研究家の写真

 健康食、ダイエット食として、オートミールの人気が急上昇中だ。英米では牛乳でかゆ状に煮たポリッジ(porridge)を朝食に食べる。これまでは「ドロドロ、べちゃべちゃしてまずい」というイメージが強かったが、レシピのバリエーションが増えて見違えるほどおいしく食べられるようになった。(写真:牛乳と一緒に加熱してポリッジにするのが一般的だったが、水分を減らせばご飯のようになり、おにぎりも作れる=筆者撮影)

 オートミールはエンバク(燕麦)を加工したシリアルの一種。加熱が必要なタイプと、水分でふやかすだけで加熱がいらないタイプがある。シリアルは穀物をそのまま食べられるよう加工した食品の総称で、ほかにコーンフレーク、グラノーラ、ミューズリーが代表的な種類だ。

 グラノーラはオートミールにドライフルーツとナッツ類を混ぜ、砂糖や蜂蜜、メープルシロップなどをからめて香ばしくローストしたもの。10年ほど前からブームになっているが、カロリー、糖質とも高いのが難点だった。

 巣ごもり生活で人々の健康に対する意識が高まるなか、コロナ太り解消に好適なシリアルとして注目されたのがオートミールである。

 白米と比べて、食物繊維は約19倍、たんぱく質は約2倍、鉄は約5倍、カルシウムは約9倍も含まれ、ビタミン類も豊富。血圧を安定させ、コレステロール値を下げる効果もあるという。

 一食分に換算すると糖質はご飯の3分の1、カロリーは約半分に抑えられるので、主食をオートミールに置き換えると、健康的で無理のないダイエットができるというわけだ。ふやかす水分を少なくしてご飯風にしたり、チーズやトマト味のリゾット、しょうゆやみそ味の雑炊にしたりと、多種多様なレシピが考案されている。

 工業的に製造されたシリアルは、20世紀初頭にアメリカで生まれて世界に広まった。日本では1963年に「手軽に栄養がとれる、米でもパンでもない新しい朝食」の鳴り物入りでコーンフレークが発売されたのが第1号。オートミールの代表的なブランドの「クエーカーオーツ」もアメリカ製だが、ヨーロッパのコムギの成育に適さない寒冷な地域では、古くからひき割りにしたエンバクのかゆを主食として食べていた歴史がある。

 エンバクはカラスムギ、オーツムギの別名があり、痩せた土地でもよく育つ。家畜の飼料、とりわけ馬の育成に適し、これを欠いては駿馬の産出は不可能といわれた。

 日本には明治初期に導入され、軍馬、農耕馬、競走馬用の高栄養飼料として北海道・十勝平野や九州・阿蘇山麓で多く栽培されてきた。初の国産オートミールが札幌で製造されたのは、1929年。虚弱者や小児向けの「滋養食品」に位置づけられて、糖尿病患者の食餌療法にも用いられたという。

 このように、オートミールは戦前から取り入れられ、愛好者が少なからずいた。夏目漱石もその一人で、イギリス留学中に書いた「倫敦(ロンドン)消息」には、「麦の御粥(かゆ)みた様なもので我輩は大好だ」とある。そのあと、馬が食うオートミールを朝食に用いるのが「別段例外でもない様」なのは「英人が馬に近くなったんだろう」と冷やかしているのが漱石らしい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年10月18日号掲載)

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