食べ物あれこれ(マ行) 落語の森 紫紺亭圓夢
2021.09.27
マタタビ、ご存じでしょうか。「マタタビ科のつる性落葉低木。果実は長円形で、食用・薬用。ネコはこれを好む」と福武国語辞典にある。
「マタタビをなめさせて、奥へ寝かせてあります」と言われるのが「金明竹」に登場の道具屋の主人。言ったのは、「与太郎」さん。柳家小三治師は、「松公」で演っている。
この噺(はなし)、なんと言っても上方弁の長口上が聴きもの。口ならし用の前座噺だが、その昔三遊亭圓生師がよく演っていて、意味は分からないが、当時小学生だった筆者も「ヒョウゴノ、ヒョウゴノ」で笑っていた。
先々代(三代目)三遊亭金馬師のも分かりやすくて楽しめた。三遊亭円丈師は、名古屋弁で演る。柳家小袁治師は、東北弁で。分からないのは「加賀屋佐吉から来た」という使いの男、重要な内容だろうになぜ上方弁を早口でまくしたてるのか!
そういえば以前は「錦明竹」の表記が多かったが、いつしか「金明竹」の方が主流になってきたような気がする。
「豆屋」、先代(十代目)桂文治師から当代文治師に伝わっている。先年亡くなった笑点の人気者・林家こん平師も大きな声で演っていた。短い噺なので、時間のある高座では「ダイコンと付けべき文字に付けもせず 要らぬゴボウをゴンボウと言う」「おさつの丸ゥ~揚げ」の「売り声」のマクラをつけ、新宿・末廣亭の場内をワンワン沸かしていた。
まんじゅうといえば「まんじゅうこわい」だろうが、今回は「佐々木政談」、利発な子ども四郎吉がお奉行ごっこでみごとなお裁きを見せる。奉行所に連れて行かれ、奉行・佐々木信濃守に「父母どちらが好きじゃ?」と問われ、まんじゅうを二つに割って「どっちの方がおいしゅうございます?」と答える。この辺りのやりとりが見もの。古今亭志ん輔師らが演る。金馬師は、奉行を大岡越前守にして「池田大助」というタイトルで演っていた。
「村を出る頃にさめるから、村雨(むらさめ)」という酒を出すおばあさんが愉快な「二人旅」、先代(五代目)柳家小さん師から立川談志・小三治、そして昨年7月に小燕枝からさん遊に改名の一門各師に伝わっている。
とんでもないみそ汁を出されるのが「春雨宿」、あやつり踊りの先代(八代目)雷門助六師から当代助六師に伝わり、昔昔亭桃太郎師も。落語芸術協会の面々が演っている噺。
水垢離(みずごり)。神仏に祈る時、水を浴びて心身を清める。「宗珉の滝」でも大事な場面だ。江戸時代の腰元彫りの名人・横谷宋珉は「金明竹」のあの言い立ての中に「四分一ごしらえ横谷宋珉小柄付きの脇差」と出てくる。噺はその弟子の宗三郎が主人公。
大概の場合、名人の倅(せがれ)や弟子は、大した働きをしないが、この噺もご同様。ところが一念発起、水垢離をして...。古今亭志ん朝師から弟子の志ん橋師や落語協会を退会し、フリーで活動している駿菊師が演っている。こちらの方々は名人の薫陶を受け、聴き応え十分な高座を見せてくれる。
(KyodoWeekly・政経週報 2021年9月13日号掲載)
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