シャブリは奥が深い 土地ならではの魅力満載 石田敦子 エノテカバイヤー
2021.06.21
日本では特に知名度が高いとされるフランス・ブルゴーニュ産の白ワイン"シャブリ"。
ワインを普段飲まれない方もシャブリをご存じの方は多いはずだ。私が「シャブリが大好き」と話すと、ワイン業界人同士であれば「やっぱりそうだよね~」となり、友人や知人からは「え?シャブリなの?」と驚かれる。
流通量や生産量が多いイメージが強いからかもしれないが、シャブリはプロが本気でほれこむ産地! そう断言できる。
私自身、シャブリ愛飲歴は長く、わが家でも常備している。ブルゴーニュワインは、一部高騰しているものがあるものの、シャブリは満足度とコスパが高いものが多い。
気楽な価格のものはデイリーとして、プルミエ・クリュ(一級畑)と呼ばれるちょっといいものは数年セラーで熟成させる。シャブリの熟成ポテンシャルに毎回驚かされながら、バイヤーとしても飲み手としても、シャブリがやめられない。
生産地を訪問して、その思いにさらに拍車がかかった。ブルゴーニュの中心から車で2時間弱かかる距離で、数回に分けて訪問した。
夏の1人出張もあったが、エノテカ会長の廣瀬恭久は、「シャブリを追求するのは大賛成だ。(交渉を)やってみなさい」と背中を押してくれた。
新たな小規模生産者も2年前から加わった。既存の生産者とも密に情報交換をしてシャブリの魅力を追い求めた。それはワインラバーにシャブリを伝えるために欠かせない"多様性"をいま一度、われわれが理解することであり、そして吟味した生産者の魅力を発信するためであった。
シャブリは奥が深い。渓谷が美しくて、複雑な地形、右岸、左岸、多様性のある土壌、知名度が低くても優秀な生産者や秀逸な畑があり、その土地ならではの魅力が満載で、生産者ごとの個性もある。(写真:ダニエル・ダンプの畑にて。畑ごとの違いを比較して味わうのも楽しい)
ワインの味わいは、ふくよかなもの、すっきりしたもの、個性はさまざまあるが、透明感があるキメの細かい素肌のようなピュアな美しさは、インパクトのある香りや味というよりも、自然体のものが多い。
そして、厚化粧なワインでないからこそ、濃い味付けではなく素材を生かした食事ともよく合い、ワインが食卓の主役としてでしゃばることもなく寄り添ってくれる。
シャブリの生産者は、主張が控えめで、謙虚で真面目で実直、職人気質な方も多いので、食卓のシャブリの存在とリンクする気もする。
シャブリがますます心地よく感じられる季節を迎えた。家の窓を開け、外の空気も感じながら、あっさりした塩焼き鳥に、ワサビやゆずこしょうをつけながら、手軽な一品をお供にシャブリを1杯(いや1本?)、自宅でありのままの自分スタイルで、ぜひ楽しんでみてください。
(KyodoWeekly・政経週報 2021年6月7日号掲載)
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