食べ物語

うま味たっぷり「喜多嬉かき」  「日本遺産」笠岡諸島の味  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2021.04.12

うま味たっぷり「喜多嬉かき」  「日本遺産」笠岡諸島の味  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 岡山県南西部の笠岡市にあって、南は香川県、西は広島県に接し、大小約30の島々が南北に帯状に点在しているのが笠岡諸島だ。

 そのうち、高島、白石島、北木島、真鍋島、大飛島、小飛島、六島の七つの島が有人島であり、面積15.36平方㌔㍍、人口1522人で笠岡市全体のおのおの11.3%、3.22%を占めている。笠岡諸島は古くから海上の要衝として栄え、穏やかな自然条件も加わり、歴史と伝統・文化を刻み、同時に石材産業の開発、海洋資源の利用、自然環境の保全などに重要な役割を担ってきた。

 2019年5月に丸亀市、小豆島町、土庄町と共同申請していた「知ってる!?悠久の時が流れる石の島~海を越え、日本の礎を築いた せとうち備讃諸島~」が日本遺産に認定され、翌年には六島の「大石山」が追加認定。笠岡諸島のすべてが日本遺産となり、今後の観光振興や地域活性化に明るい光明が見えてきている。

 笠岡諸島で最大の島であり、約700人が居住する北木島は、古来より良質な花こう岩の採掘場として栄えてきた。北木島から産出される北木御影石は、靖国神社の大鳥居や日本銀行本店本館など国内の有名な建築物に使用されている由緒ある産品である。また近年では、お笑いコンビ「千鳥」の大悟さんの出身地としても認知されている。

 今回、この島の味として紹介したいのが、勇和水産の「喜多嬉かき」(写真)である。

 喜多嬉かきは北木島海域の漁場で水揚げされる。付近には一級河川などの河口がないため、生活用水などの排水で海水が汚れることはなく、過去18年間厳しい水質検査をパスした透明度の高い海水と、瀬戸内海の東西の海流がぶつかり合う海域で育まれた、豊富なプランクトンがおいしいかきを育てている。

 喜多嬉かきの食べ方にはいろいろあるが、生で食べるかきは白ワインによく合うといわれている。殻付きのかきをそのまま炭火焼きの網の上で焼くシンプルな焼きがきも、ほどよく塩味がきいており、うま味成分をたっぷり含んだ絶品である。

 喜多嬉かきには、1年中水揚げしたままのおいしさを楽しんでいただけるよう、鮮度の落ちにくい特殊な冷凍技術が採用されている。一度試していただきたい逸品である。

 この他にも、笠岡諸島にはおいしい味がたくさん存在する。

 種付けからこだわり、香り豊かで口の中で溶けるような味わいの海苔(高島)、ろ過せず酵母を残した仕上げで、素材本来の風味とうま味が楽しめる六島浜醸造所のクラフトビール(六島)、とれたての魚を鮮度の良いうちに火山灰で低温暗室熟成した灰干し(北木島)、コリコリした食感が特徴である天然ひじき(六島)、「誠においしい!」と評判の高い天日干しされた天然わかめ(真鍋島)、島に自生する桑の木の葉から作られた桑茶(白石島)などなど。

 いずれも瀬戸内海の温暖な気候と穏やかな海に育まれた笠岡諸島ならでは品々である。機会を見つけてご賞味いただくことをお勧めしたい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年3月22日号掲載)