食べ物語

段々畑が育む絶品  萩市・相島スイカは1株1果どり  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2021.08.02

段々畑が育む絶品  萩市・相島スイカは1株1果どり  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 山口県萩市は、長州藩の城下町であり、幕末・明治維新に際して、吉田松陰をはじめ、多くの優れた志士・偉人を輩出したことで知られる土地だ。

 その沖合に三つ(櫃島を入れると四つ)の有人離島がある。本土に近い順に挙げると、大島、相島、見島となる。

 まず大島は、沖合約8㌔に位置する面積約3平方㌔㍍、周囲8.5㌔の島である。古くは壇ノ浦の戦いで敗れた平家の落人7人が流れ住み着いたとされる「七名伝説」が語り継がれている。276世帯、641人が居住し、漁業の盛んな島だ。県内の島の水揚げ高としては最高額を誇っている。また、潮風に当たって育ち、柔かくおいしいブロッコリーの産地としても有名である。

 次に相島は、沖合約14㌔に浮かぶ、面積2.48平方㌔㍍、周囲10.5㌔の島である。島の周囲をめぐらす奇岩の数々はまさに絶景であり、かつては海上防備の島として要衝であったといわれる。

 64世帯、133人が住んでおり、丘陵地の斜面に石垣を築き造られた段々畑では、相島スイカ、サツマイモ、葉たばこなどが生産されている。

 そして見島は、北西の沖合約45㌔にある萩諸島で最も大きな国境の島であり、面積7.73平方㌔㍍、周囲17.5㌔となっている。

 萩商港から高速船「おにようず」で約70分かけて行く島には、433世帯、697人が住んでいる。早くから大陸との交易の中継地であったとみられ、防人が置かれたこともあったことから、島内にはジーコンボ古墳群をはじめとする史跡が多く残されている。

 最北端の長尾の鼻は、同じ場所で太陽が水平線から昇り水平線に沈むのを見ることができる珍しい場所である。また、見島牛と見島カメという二つの国指定天然記念物が存在している。

 そこで、今回ご紹介したいのが、相島の段々畑で栽培されている相島スイカ(写真:萩市提供)である。

 相島には平坦地がほとんどなかったため、島の人々が長い年月をかけて、自分たちで岩石を集めたり割ったりして石積みの段々畑を築き上げてきた。

 その結晶として造り上げられた芸術品のような段々畑で育て上げられているのが、これまた絶品のスイカなのである。

 相島のスイカの生産高は山口県内産の過半を占めている。日本海からの潮風と日照時間が長い温暖な気候、そして水はけがよい粘質土壌で作られているため、甘くておいしいという定評がある。

 そうした気候を生かして、1株から3本のつるを厳選し、そこからたった1個だけを丹精込めて大きくするという、いわゆる「1株1果どり」の栽培をしているのである。この相島スイカにはオーナー制度があるので、お試しいただきたい。

 本土に戻ってみると、漁協をはじめ、地元生産者が集結して運営する、臨海の生鮮市場「萩しーまーと」がある。ここで入手することができるのが「萩瀬付きアジ」である。

 本来は回遊しているアジが、瀬に住み着いてプランクトンを多く食べて育つため、肉厚で脂が乗っているのが特徴だ。機会を見つけて堪能いただきたい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年7月19日号掲載)