食べ物語

ふく(福)を招く  陣内純英 西海みずき信用組合理事長

2021.01.11

ふく(福)を招く  陣内純英 西海みずき信用組合理事長の写真

 長崎県は水産県だ。漁獲高(天然)を見ると、タイ、ブリ、アジ、サバ、アマダイ、イサキ、サザエが全国1位。イワシ、アナゴ、イカもベスト3に入る。

 しかし、最近では、意外な魚が全国1位になっている。養殖のフグ、クロマグロだ。フグは全国シェアが50%近い。佐世保市、松浦市が主な産地だ。ただ、このことを長崎県民はあまり知らない。

 私も、マグロといえば大間、塩釜、三崎、清水、焼津あたりが思い浮かぶ。フグはもちろん下関だ。そもそもマグロやフグを長崎県民はあまり食べない。とにかく魚種が豊富で新鮮なので、マグロやフグの出番がなかったのかもしれない。

 築地や上述の漁港にはマグロ専門店が立ち並び、山口県・下関の忘年会、新年会はほとんどフグ料亭だが、長崎県・佐世保に数多くある海鮮の店の中にマグロやフグの専門店は見当たらない。

 佐世保のフグ消費が少ないのには、生産者の事情もある。海上の養殖いけすまで船で行き水揚げするのは、1回当たり1000匹以上。小ロットだと往復の時間や燃料代などコストアップになるからだ。これを売りさばくには大きな市場に持ち込む必要があるため、全部下関に行くことになる。(写真:下関に向かう鮮魚輸送車の中のフグ=有限会社ヤマサ水産代表取締役の佐藤隆士氏撮影)

 つまり、従来の海上養殖では、数十匹、百匹単位で市内の料亭や市場に卸すことは難しいのだ。

 しかし、諦めるのは早い。実は最近増えている海岸(陸上)での養殖なら小ロットでも問題ない。今後、陸上養殖業者と飲食店とをつなぎ、フグバーガーなど産地ならではのぜいたくなメニューも開発して、「フグを食べに佐世保に行こう!」というトレンドを作っていけば、佐世保の魅力がまたひとつ増え、ふく(福)を招くことになろう。

 加工食品では、練り製品の消費量が多い。県庁所在地のランキングで、長崎市は仙台市とトップを争っているが、そのこともあまり知られていない。「笹かまぼこ」や「さつま揚げ」といった全国に名が通った商品もない。

 佐世保の多くの店で提供される「すり身揚げ」は絶品だ。さつま揚げ、飫肥天、ジャコ天、黒はんぺん、赤天などと食べ比べバトルをやってみたい。

 サバ缶でも良いメーカーが佐世保(工場は松浦市)にある。銚子より西では最大の工場で、主に対馬近海の良質のサバを使っているので、ほかの工場の缶詰とは一味違うような気がする。

 ただ、惜しいことにOEM(相手先ブランドによる生産)中心なので、佐世保市民にさえも「相浦缶詰」という社名はあまり知られていない。知っている人も、その商品を手に入れるには、製造所表示を見て選ぶしかない(ラベル表示がない場合は、賞味期限のそばに「ABC1」と打ってあるのが同社の缶詰だ)。

 ぜひオリジナルブランドを展開してほしい。料理人や学生と佐世保オリジナルのサバ缶レシピを開発するのも面白いだろう。

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年1月4日号掲載)

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