合わせ調味料で「時短お節」 常備したい「かえし」と「甘酢」 タカコナカムラ ホールフード協会代表理事
2020.12.25
お節料理の「節(せち)」とは「節日(せちにち)」のことを指します。節日は季節の変わり目に当たる祝日で、昔は節日には朝廷で節会(せちえ)という宴が催されていました。
神様が到来する節の日に神様に供える供御のことを「節供」と言いました。 正月が最も重要な節の日であるため、年神に供える料理を「節供料理」と言うようになり、縮まって「おせち」となったそうです。
年神様にお供えし、ともにいただくお節料理。お節料理は新しい年の五穀豊穣、一家安泰、子孫繁栄を願って一品一品を縁起に見立てたものです。
お節料理には煮る、蒸す、焼くという和食のいろはが全部詰まっていて、上手に作れる人は間違いなく料理上手です。
最近、お節料理は百貨店やコンビニから取り寄せたり、買ったりするものとなってしまいました。お節料理を食べない人も増えているのは、本当に残念です。
親が作らないと子供は、お節料理の意味も味も知らずに大人になっていきます。せっかくの和食の文化まで消滅していきます。私は1品でも2品でも、家庭で作ってほしいと願っています。
取り寄せのお節料理は、無添加で日持ちさせるためには、砂糖で甘くして防腐する他ありません。「ここまで甘くしなくてもいいのに...」と思うものが多いと感じています。
そこで考案したのが、誰でもできる「時短お節」です。時短といってもレンチンでパパッと、ではありません。
まずは「かえし」「甘酢」という2種類の合わせ調味料を用意します。これらは食品ジャーナリストの安部司さんが考案されました。私は料理担当で、来春には東洋経済新報社からレシピ集として出版される予定です。
かえし
かえしは、しょうゆと砂糖を10:3で混ぜたもの。常温で保存可能。台所に常備しておくと和食が時短でできます。牛丼から肉じゃが、煮物にも使える、オールマイティーな"便利調味料"です。
かえしはお節料理用に黒豆煮、田作り、煮しめ、ブリの照り焼きなどに使え、汎用性が高いのです。その中から男性に人気のメニューである、ブリの照り焼きを紹介しましょう。
ブリの照り焼き
〈材料〉
・ブリ 2切=事前に臭み取りに、塩を振りしばらくおき、水分をペーパーで拭き取っておく
・かえし 適量
・油 適量
〈作り方〉
・余熱したフライパンに油を引き、ブリを入れます。皮目がひっ付くというのは、余熱が足りないため。余熱していったん火を弱めてから油を入れます。慌てずじっくり焼きましょう。
・魚の周りが白く加熱されたら、ひっくり返します。早すぎると皮がひっ付きます。両面を焼いたらフライパンの余分な油をペーパーでふき取ること。かえしを適量入れていり付けます。これで完成。
甘酢
米酢と砂糖が10:7の割合。鍋に米酢と砂糖を入れて沸かし、酢の酸味を飛ばし、砂糖を煮溶かします。瓶に入れて常温保存。
紅白なます
大根とニンジンを細切りします。軽く塩をしてしんなりしたら、水気をぎゅっと絞ります。そこに甘酢をかけて完成。
魚の南蛮漬けも、揚げた魚にかけるだけ。酢飯は甘酢に10%の塩を入れて混ぜる。炊きたてのご飯に混ぜると完成です。
どうでしょう? 2つの合わせ調味料で時短おせちに挑戦してみてください。お節料理のためではなく、キッチンに常備しておくと和食を簡単においしく作ることができます。
コロナ禍の邪気を払ってお節料理とおとそで新年に乾杯!
筆者は料理家のタカコナカムラさん。安全な食と暮らしと農業、環境を「まるごと=whole(ホール)」考えて活動する一般社団法人「ホールフード協会」の代表理事です。
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