ワイン選びという冒険 石田敦子 エノテカ バイヤー
2020.12.14
日々の生活の中で、私たちはたくさんの「選択」をしているが、「ワイン選び」は、ハードルが高く、そもそも選ばない、という方はまだまだ多いだろう。 どう選べばよいのか。どうレストランでオーダーすればよいのか。
値段、味わい、どれが自分に合っているのか。ワインは日常的というよりも、限られた人たちが楽しむ嗜好品だと、かつて私自身も思っていたところもあり、もっと身近にワインをラクに選んでもらうには「どうすればいいのか?」とよく考える。
ただ、やはり選ぶ基準を持つこと自体が難しい。
従って、ワインをはじめる第一歩は「選んでもらう」が王道だと思う。
ワインのキャパシティーはとても広く、「特別」「日常」「アウトドア」さまざまな場面に合うワイン、そして人それぞれの相性は無限にある。自力で好みを見つける道のりも楽しいが、最初の一歩は他力に任せてしまうのだ。
(写真:無限の可能性が広がるワインの世界=ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店)
選んでもらうときに大切なことは、自身の気分だ。「好奇心?」「安心?」「冒険?」「定番?」自身の心の受け皿によって予算も、選ぶものも、楽しめるものも変わってくる。専門用語は必要がないが、さまざまな言葉のやりとりから、プロは1本のワインにつなげてくれる。
これは旅やファッションにも似ている。旅先での行動、どこに行くかを全部決めるタイプもいれば、なりゆきタイプもいる。洋服の選び方も、好きな色も好みもがっちり決まっている人もいるし、会うたびにスタイルが異なる人もいる。ワイン選びもずいぶんと似ている。
わが家は夫婦そろってワインを買い、ワインを飲む。主人もソムリエの仕事に長年携わり、飲食業界で仕事をしているため、2人ともワインとの距離は近く、公私共にワインを選ぶ場面も多い。
レストランに行けば、とりあえずシャンパンと2冊のワインリストをお願いして、お互い読書のようにリストを眺める。気になって選ぶものは年々似てきたが、ここ数年、ソムリエに選んでもらう機会も増えた。
料理ごとにグラスワインを合わせてもらうペアリングを頼むこともあるし、オススメを聞くこともある。他力本願の冒険を肩の力を抜いてやってみると、とても楽しい。
1人より2人、2人よりもっと、掛け算のごとく広がっていくのが食の世界。魅力的なシェフ、ソムリエの世界へ飛び込むことは、行動範囲が限られる今の時代においても、刺激や発見が満載だ。
ワインを選ぶ」「ワインを選んでもらう」。レストランやワイン専門店でのその時から、冒険は始まる。生産地や造り手とのつながりを感じられるひとときは、いつもの暮らしを豊かにするエッセンスになるはずだ。
(Kyodo Weekly・政経週報 2020年11月30日号掲載)
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