魅力満載の佐渡島 小島愛之助 日本離島センター 専務理事
2020.09.14
新潟市から西に約45㌔の日本海上に浮かぶ、わが国最大の離島が佐渡島である(北方領土を除く)。面積は854.76平方㌔で、東京都区部の1.36倍を超えている。島の地形は三つに大別でき、北部の大佐渡山地と南部の小佐渡山地に挟まれた中央部には、広大な穀倉地帯である国仲平野が広がっている。
大佐渡山地の方が標高が高く、島の最高標高である金北山(1172㍍)も大佐渡山地側にある。金北山の西隣の妙見山の山頂には、日本海の一定空域を監視する航空自衛隊の新型レーダーサイトがある。大佐渡山地の北側は海岸のすぐそばまで山肌が迫り、断崖絶壁と無数の岩礁が約50㌔にわたって連なる景勝地である。
一方、小佐渡山地は相対的になだらかな丘陵地帯だといえる。国仲平野は離島の平野としては広い面積を持ち、国府川など多くの川で潤うため、稲作が盛んである。平野の西側には真野湾、東側には両津湾と新潟県最大の湖である加茂湖(汽水湖)があり、多様な水産物に恵まれるととともに、カキの養殖も行われている。
島の歴史は古く、「古事記」の国生み神話には「大八洲」の一つ、「佐度島」として登場している。8世紀初頭には、伊豆や隠岐などとともに、天皇、公家や政治犯などが流される遠流の地に定められている。その後、順徳上皇、日蓮聖人、世阿弥など多くの著名人が流されることとなり、都の言葉や文化が伝えられる結果となっている。
佐渡島の話をする際には、佐渡金山に触れなければならないだろう。佐渡金山の開発が本格化したのは、徳川幕府の直轄地となり、佐渡奉行が置かれてからのことである。17世紀初めの最盛期には、中心である相川は5万人の人口を有し、世界有数の産出量を誇る金銀鉱山として、幕府の財政を支え続けてきた。
この間、小木港が金銀の積出港や北前船の寄港地として栄え、流人のもたらした文化とは異なる町人文化を持ち込んでいる。現在、佐渡金山は世界遺産登録を目指し、運動が続く。
佐渡島の沖合には対馬暖流が流れ、その影響を受ける海洋性気候のため、冬は新潟県とは思えないほど暖かく、逆に夏は涼しいという、すごしやすい環境に恵まれている。そのような環境もあって、果物については、ミカン、レモンからリンゴまで収穫できるという多様性に富む。筆者の経験では、おけさ柿が印象に深い。シャーベット状に凍らせたものは二日酔いの特効薬として最適な一品だ。
有数の果物群の中で、この機会にお勧めしたいのが羽茂地区などで生産されている「ル・レクチェ」だ。ル・レクチェは、ラ・フランスと同じ西洋梨に分類される果物であるが、他の品種に比べて、濃厚な甘味、なめらかな食感、芳醇な香りなどが段違いに優れている。(写真:JA佐渡のル・レクチェ=佐渡市提供)
毎年10月中旬以降に収穫した後、1カ月強という長い期間、倉庫内での追熟を行い、その結果、果実内の成分が糖分に変わり、甘い味わいが生まれるわけである。こうした追熟という工程があるため、標準的な出荷時期は11月下旬以降となっており、歳暮ギフトの好適品として重用されている。
(Kyodo Weekly・政経週報 2020年8月31日号掲載)
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