アグリサーチ

水田活用の直接支払交付金の厳格化 東京農大総研  鈴木充夫  

2024.06.08

ツイート

水田活用の直接支払交付金の厳格化 東京農大総研  鈴木充夫   の写真

 国は、これまで、コメの転作作物として大豆や麦、飼料作物を栽培する農家に対し、10アールあたり年間3万5千円の補助金を出してきた。しかし、2022年に農林水産省が打ち出した「水田活用の直接支払交付金の厳格化」では「5年間(2022年~26年)に1度も水を張らない水田に対しては、26年度以降は交付金を出さない」と政策を変更し、転換作物が固定化している水田の畑地化を促している。

 今回は、この政策変更について、山形県米沢市の米関連卸会社の水田10haを耕作している農家を想定した粗収入の試算を紹介する。この試算では、農家は10haの水田に主食米5.5ha、4.5haを飼料米(ケース1)と白大豆(ケース2)を作付した場合を想定している。

 米の反収を10俵(600kg)、白大豆の反収を200kg、単価は生産者手取りを主食米13000円(1等米)、飼料米を600円、白大豆を8500円(2等)としている。また、農業協同組合(JA)等を通じた販売の場合は、委託販売手数料が課税対象になることから、その分を13%としている。これらの試算の数字は山形県川西町の実勢価格と「JA山形おきたま」を基にしている。

☆JA等無条件委託・共同計算方式
【ケース1 主食米5.5ha、飼料米4.5ha】
粗収入1(補助金あり):1214万(主食米823万、飼料米売上31万、転作補助金360万)
粗収入2(補助金なし):854万(主食米823万、飼料米売上31万)
【ケース2 主食米5.5ha、白大豆4.5ha】
粗収入1(補助金あり):1273万(主食米823万、白大豆売上146万、転作補助金304万)
粗収入2(補助金なし):969万(主食米823万、白大豆売上146万)


☆業者等買取方式
【ケース1 主食米5.5ha、飼料米4.5ha】
粗収入1(補助金あり):1102万(主食米715万、飼料米売上27万、転作補助金360万)
粗収入2(補助金なし):742万(主食米715万、飼料米売上27万)
【ケース2 主食米5.5ha、白大豆4.5ha】
粗収入1(補助金あり):1146万(主食米715万、白大豆売上127万、転作補助金304万)
粗収入2(補助金なし):842万(主食米715万、白大豆売上127万)
補助金なしの粗収入2のケースは、5年間転作している水田に1度も水張りをしない場合であり、逆に水張りをした場合は粗収入1である。

 一方、農林水産省の生産費調査からコメと麦の生産費について確認すると、10アールあたりのコメの全生産費は、10haから15haの個別経営で10万5014円なので、10haで主食米+飼料米を作ると1050万円かかる。また、5.5haの米、4.5haに白大豆の場合は、5haから10haの個人経営では、10アールあたりのコメの全生産費は10万9490円、大豆の10アールあたりの全生産費は5万9700円なので、5.5haの米では602万円、4.5haの大豆は268万円であるので、全体で870万円になる。

 この生産費を上述した試算と比較すると、補助金なしのJA等無条件委託販売と買い取り販売の粗収入は、ケース1(主食米5.5ha、飼料米4.5ha)では、JA等無条件委託・共同計算方式で854万円、業者等買い取り方式で742万円、ケース2(主食米5.5ha、白大豆4.5ha)では、JA等無条件委託・共同計算方式で969万円、業者等買い取り方式で842万円となっているから、これらの粗収入と生産費を比べると、ケース1(水張りして補助金あり)では、JA無条件委託販売で196万円、業者買い取りで308万円の赤字、ケース2(水張りなしで補助金なし)では、JA無条件委託販売で99万円の黒字、業者買い取りで28万円の赤字になる。
 

 つまり、現地卸業者の試算と農水省の生産費調査からの計算では、転作奨励金が廃止されれば、ケース2のJA無条件委託販売での99万円の黒字以外は全て赤字になる。

表5.png

(次回=最終回=は6月15日掲載)