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「研究紹介」具体化する自然関連の情報開示 農林金融12月号から

2023.12.26

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「研究紹介」具体化する自然関連の情報開示 農林金融12月号からの写真

 1992年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミットで、気候変動枠組み条約と生物多様性条約の2つの条約が調印された。画期的な「双子の条約」と呼ばれている。ただ、30年余りを経て、気候変動枠組み条約が曲がりなりにも具体的な数値目標を設定し、その達成に向けて白熱した議論と各国の努力を積み重ねてきたのに対し、生物多様性条約は概念自体が複雑で十分に認知されているとは言い難い。

 水面下で進んできた国際交渉に関する報道も不十分だった。「二酸化炭素の排出削減」や「カーボン・ニュートラル」について理解している人でも、「(生物多様性の)損失の反転」や「ネイチャー・ポジティブ」は初耳だという人も多いだろう。

 しかし、23年9月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature related Financial Disclosures)が公開され、いよいよ身近な課題になってきた。特に経済活動の要である金融機関の役割は重要で、日本からは農林中央金庫、MS&ADインシュアランスグループ、みずほフィナンシャルグループの3者がTNFDの早期採用組織だ。

 農林中金総合研究所の機関誌「農林金融」(202312月)所収の「動き出した自然関連財務情報開示―TNFDフレームワークの解説とビジネスセクターにおける論点―持続的なバイオ炭の農地施用に向けて―地域課題解決を起点に―」(梶間周一郎研究員)は、地球サミット以降の流れを概観した上で、TNFDの論点を整理し、とても分かりやすい。

 地球環境に関する国際ルールが、どのように形成されるのかも理解できて興味深い。「先住民族、地域社会」が要件に入っているものの、実質的に欧州の思考様式や価値観が強く反映され、このような「上から目線」では途上国が反発するのも無理はないだろうと感じる。後半は金融実務者向けでやや専門的だが、入門者には前半だけでも一読を勧める。

 12月号は、温室効果ガスの削減についても優れた研究報告を掲載している。「持続的なバイオ炭の農地施用に向けて―地域課題解決を起点に―」(石塚修敬研究員と河原林孝由基主席研究員)は、竹や籾殻を炭にして農地に投入することで、CO2の貯蔵と土壌の改良を「一石二鳥」で目指す国内の実例を3件紹介し、バイオ炭の製造を地域課題解決の一手段として位置付けることの重要性を強調している。バイオ炭技術の農村での普及を強く期待したい。