「研究紹介」世界的な食料危機の中で、持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割を考える 生活協同組合研究1月号
2024.01.22
新型コロナの感染拡大やロシアによるウクライナ侵略を背景に、食料安全保障に対する関心が高まり、少し落ち着いたとは言え食料価格は高止まりしている。政府は「食料・農業・農村基本法」の改正案を通常国会に提出する予定だ。
こうした状況を踏まえて、生協総合研究所は2023年10月28日に全国研究集会「世界的な食料危機の中で、持続可能で健康的な食のあり方と生協の役割を考える」を開催した。同研究所の月報「生活協同組合研究」の24年1月号(Vol.576)はその採録だ。
国際農林水産業研究センターの飯山みゆき・情報プログラムディレクターは、食料システムの国際潮流を地球環境との関わりを中心に概観し、食生活のパラダイムシフトが必要だと訴えている。農林水産省の杉中淳・総括審議官は、基本法を改正する背景と狙いを解説している。早稲田大学の下川哲・政治経済学術院准教授は、持続可能な「食」と「農」を考える場合に「人間らしさ」という視点を強調し、意識変革を促すだけではなく社会制度など「仕組み」を変える重要性を説いている。
解題では同研究所所理事長の中嶋康博・東大大学院教授が、日本の食料自給率の低下傾向について、1960年代以降6段階の変化があり、今後は国内供給が一段と減少する厳しい状況を説明している。4人の講演の内容のバランスがとても良く、さまざまな視点を与えてくれる。基本法改正案が国会で審議される前に是非、読んでおきたい。
質疑応答や、講演者に河野康子氏が加わったパネルディスカッションの応答も採録され、「すべての人が持続可能で健康的な食生活を享受できる社会のしくみづくり」に向けて生協が果たす役割についても言及している。