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「研究紹介」 麦以外は増産困難 農林金融2024年6号から

2024.06.27

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「研究紹介」 麦以外は増産困難 農林金融2024年6号からの写真

 改正食料・農業・農村基本法が65日に公布・施行され、農業政策の焦点は同法に基づく中期指針である基本計画の策定に移った。政策目標として食料自給率の位置付けやその水準に関心が集まっているが、「せめて半分は国産で」などのような情緒的で根拠に乏しい数値目標を設定してはならない。

 国内の生産力の維持・向上の水準について、客観的なデータに基づいて議論を深めるべきだ。基幹的農業従事者が急減する中で国内生産を維持するため、農水省は農地などの経営資源を大規模営農に集中して生産効率を高める「少数精鋭」を目指してきた。この姿勢は改正基本法でも踏襲された。しかし、経営規模の拡大だけで国内生産は維持できるのだろうか。

 農林中金総合研究所の機関誌「農林金融」(20246月)所収の「農業経営体の構造変化と生産水準」(内田多喜生常務取締役)は、経営規模に着目して稲など主要9品目を対象に2050年の生産力の水準を試算した。

 その結果は衝撃的だ。麦類が34%の増産となり、施設野菜とブロイラーが現状を維持できるのを除くと、稲、露地野菜、肉用牛、豚、採卵鶏、乳用牛は軒並み生産水準が現状を割り込む。特に乳用牛は25%減少し、稲の22%減より大幅だ。それでも「甘い見通し」かもしれない。

 耕種作物は、15年から20年にかけての経営規模の拡大が50年まで続くことを前提にした試算だが、同期間は経営効率の高い優良農地の集約が加速した時期だ。大規模経営体への農地集積がこれまでのように順調に進むとは思えない。労働力不足は一段と加速し、人口の大都市流入の傾向も続いている。

 人と農地の両面で、経営規模の拡大のハードルは高くなっている。「もはや限界」という品目もある。本論文を踏まえれば、よほどの技術革新や社会変革がない限り、国内の生産力・供給力は現状を維持するだけでも精いっぱいだと悲観的にならざるを得ない。