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「とれる魚」の高付加価値化を  濱田武士・北海学園大教授  AFCフォーラム11月号から

2022.11.15

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「とれる魚」の高付加価値化を  濱田武士・北海学園大教授  AFCフォーラム11月号からの写真

 今年4月に施行された新たな水産基本計画は、「水産資源管理の着実な実施」を前面に掲げている。水産業の成長産業化、漁村の活性化と合わせた3本柱の構成自体は、これまでの基本計画を踏襲しているが、科学的な根拠に基づく実効性のある手法で資源管理、つまり漁獲の種類と量を強力に制限する方向性を明確にした。

 この条件の下で、沿岸漁業は、他の2つの柱である成長産業化と漁村の活性化を追求しなくてはならない。こうした経営環境の変化について、濱田武士・北海学園大教授が、日本政策金融公庫の月刊誌AFCフォーラム2022年11月(秋2)号の「主張・多論百出」で分かりやすく説明している。そのポイントは「とった魚をそのまま売るのではなく、とれる魚にどれだけ付加価値を付けて流通させるかが、漁業の存続条件になる」という指摘だ。

 具体的には、一般に知られていない、サイズが規格外、調理に手間がかかる、などの理由で既存の流通に乗りにくく市場価値が低い「未利用魚」の付加価値を高めることで、小規模な漁業が成長し漁村を活性化できると提案している。

 濱田教授は「補欠扱いの未利用魚をレギュラーに昇格することで小さな成長極を形成できる」と表現する。論文では、カレイを主力とする山陰地方では、混獲され「補欠」扱いのハタハタが、主産地の秋田県で不漁になったことで「レギュラー」に昇格した事例などを挙げている。

 AFCフォーラム11月号は「資源管理と水産業の未来」を特集し、濱田教授の論文以外に多数の関連論文や報告を掲載している。

 さらに同号の「農と食の邂逅」は、山口県漁業協同組合江崎地区女性部の3人の漁師の妻たちが、見た目は華やかだが味が悪くて不人気なレンコダイを柔らかい干物にして道の駅などの人気商品に育てたルポである。

 「江崎のかあちゃん達が自信をもってお贈りするふっくら・ジューシー無添加減塩ソフトひもの」という、とても長い商品名の特産品がどのようにして生まれ、「小さな成長極」となり、定置網漁の廃止にまで追い込まれていた高齢化と過疎化が進む漁村を活性化していくかを、片柳草生氏が生き生きと描いている。