農山村で地域と深く関わる 「緑のふるさと協力隊」 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よんななエコノミー」
2024.12.02
いま、農山村での暮らしに関心を持つ若い世代が増えている。内閣府の令和3年度「農山漁村に関する世論調査」結果をみても、農山漁村への移住願望があるとする回答割合が最も高いのは18~29歳である。地域おこし協力隊として都市地域から過疎地域などに移住する人々も年間7千人を超え、若い世代の参加も多い。
農山村で若者を受け入れる独自のプログラムの構築も行われている。数日間のお試し体験から、1カ月の滞在型、中には1年以上というプログラムもある。
そのなかでも老舗のプログラムが特定非営利活動法人地球緑化センターによる「緑のふるさと協力隊」である。これは若者が農山村で暮らしながら地域でお手伝いをする1年間の挑戦を応援するもので、1994年以来、すでに31年目を数える。これまでに全国100以上の農山村に856人の隊員を派遣した実績を持つ。
このプログラムの大きな特徴は、農山村で地域の一員として深く関わることのできる環境が丁寧に用意されていることだろう。隊員にスキルは求められていない。給与はないが、住居は提供され、家賃・水道光熱費は無料。このほか毎月5万5千円が生活費として支給される。何でもお金で買うのではなく、野菜を育てたり、ご近所からお裾分けをいただくなど、隊員たち一人ひとりが知恵と工夫と助け合いの中で暮らしを営む。
隊員の活動内容や方法は特に決められておらず、若者が自ら地域のなかで人々と関わりながら、自分の役割を見いだしていく。
地球緑化センターは若者と農山村をつなぐために、充実した研修や支援体制を構築してきた。受け入れ先自治体と連携しながら、若者が農山村で地域と関わり、自分を見つめ活動に取り組む日々を、後方から応援する。
派遣前に行われる4泊5日の事前研修は、近くにコンビニもない環境で実施。農山村の現状についての学習や、フィールドワークを通じて地域に触れることを学ぶ。9月には東京で2泊3日の中間研修、年度末には総括研修があり、1年間の活動報告が行われる。毎月提出する活動レポートは手書きであり、地域を紹介するふるさと通信も手書きのイラストを描いて発行するなど、あえてアナログな仕組みも入れているという。
受け入れ当初は、都会の若者に面食らっていた農山村側も、年を重ねるなかで経験値を上げていくという。隊員たちは、日々の作業やお祭りなどを通じて、自然や地域の人々と向き合い、生活するためのたくさんの技と経験を身につける機会に出合う。
任期を終えた後、4割の隊員がそのままその地に定住することを選択している。「この地でここの人たちともっと暮らしたいと思いました」とのコメントが印象的だ。現在、32期の隊員を募集している。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年11月18日号掲載)
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