誇れる「森林国」に 赤堀楠雄 林材ライター 連載「グリーン&ブルー」
2024.11.18

しばらく前に父親は日本人、母親はドイツ人だという友人の女性から「ドイツ人は森が大好きだけど、日本人はそうでもないように見える」と言われた。
彼女によると、ドイツ人はしょっちゅう森に行き、森の中で過ごす時間が大好きだという。一方、日本ではメガソーラーの設置など開発によって森が失われるケースが後を絶たない。「日本人も、もっと森を好きになればいいのに」と彼女は残念そうに言った。(写真はイメージ)
ただ、日本は森に恵まれてはいる。国土面積のうち森が占める割合は68%もあり、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中ではフィンランド、スウェーデンに次ぐ高さだ。林野庁が作成する毎年の森林・林業白書では「日本は世界有数の森林国」だというのが常套句(じょうとうく)になっている。
国連食糧農業機関(FAO)によると、毎年、日本の国土面積の約12%に相当する470万ヘクタールもの森が世界で失われており(2010〜20年の平均値)、世界的な森の減少は深刻だ。そうした中で、日本が豊かな森に恵まれていることは確かに誇っていい。だが、誇ることはそれだけでいいのだろうか。
最近、ある人から「森林・林業には浅瀬がない」と言われた。森に興味をもっていろいろ調べようとすると、林業はもうからず不振であるとか、花粉症が深刻であるとか、マイナスワードがあふれ出てきて気がめいってしまう。底の見えない淀(よど)んだ淵をのぞき込んだようで、とても足を踏み入れる気にならないというのである。
林業の不振は事実なので、そうした情報が出てくるのも仕方がないのだが、不振さをことさらに強調する向きがあることは否定できない。課題や問題が山積しているから支援が必要であり、花粉対策もやらなければならない。つまり、マイナスワードは多額の補助金が投入される理屈付けに活用されているわけだ。
しかし、そうした情報に突き当たって森にアクセスする意欲が失われるというのでは残念過ぎる。森にはたくさんの魅力があって、みんながもっと好きになれるはずなのだ。好きになる人が増えれば、森は大切にされるようになり、それは私たちの暮らしを守ることにもつながる。人の営みの大本は自然に支えられているのだから。
森林国とは単に森が多いだけでなく、森を好きな人がたくさんいる国のことを言うべきだろう。その率をこそ高めたい。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年11月4日号掲載)
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