高級路線で泡盛のブランド強化 沖縄県、海外向け商品初投入で NNA
2023.11.21
沖縄県は東南アジアで泡盛のブランド強化に力を入れる。第1弾としてシンガポールで今月中に初の海外向けオリジナル商品の販売を開始し、飲食店などに高級路線で売り込む。シンガポール・沖縄間の直行便再開なども追い風に泡盛の存在感を高める。
沖縄県はシンガポール事務所を通じ、今年10月から事業・製品開発を支援するI&CO TOKYO(東京都渋谷区)と連携し、域内で泡盛のブランド力の向上や拡販に向けた取り組みを開始。県内の泡盛酒造各社と連携しながら、I&COが監修して海外市場向けにオリジナル商品を用意した。
海外向けに刷新した新商品は比嘉酒造(沖縄県読谷村)が製造する「残波」と、沖縄県酒造協同組合の組合員製造の原酒を厳選し熟成させた「海乃邦」の琉球泡盛2銘柄だ。スタイリッシュなボトルとラベルデザインを取り入れた。
残波は熟成年数12年と同24年、海乃邦は10年と24年の計4種類あり、いずれも長期熟成によって価値が高まった古酒(クースー、3年以上熟成させた泡盛)だ。日本では販売していない熟成年数のものもある。
2銘柄とも1瓶750ミリリットルでアルコール度数は43度。オープン価格で、熟成年数が短い方が200Sドル(約2万2000円)、長い方が400Sドルを想定している。
オリジナル商品の海外展開はシンガポールが初めて。今月下旬から販売を開始する。バーなどの飲食店やディストリビューター向けの企業間取引(BtoB)を中心に高級路線をとり、県産品の高付加価値化を図る。
沖縄県シンガポール事務所の池原平所長はNNAに対し、シンガポールでの泡盛のブランド強化について「これまでは単発のフェアなどを実施してきたが、大々的なブランド強化の取り組みは今回が初の試みとなる」と説明した。
世界的な酒の地位確立へ
沖縄県・シンガポール間では、シンガポールに本拠を置く格安航空会社(LCC)ジェットスター・アジアが11月30日から直行便の運航を再開。沖縄にとって東南アジアの玄関口であるシンガポールの重要性が増すことが予想されている。県はこの機会を生かす考えだ。
泡盛のブランドを強化する取り組みの一環として、シンガポールで11月7日まで2日間にわたり開催されたアルコール飲料業界向けの国際的専門見本市「バーコンベント・シンガポール」で、海外向け商品4種類を初お披露目した。(写真上:国際的専門見本市「バーコンベント・シンガポール」では、海外市場向けの泡盛のオリジナル商品がシンガポールで初お披露目された=同国中央部、NNA撮影)
I&COの担当者は「日本発の酒類の中で、泡盛は日本酒やジャパニーズウイスキーなどと比べて海外での認知度がまだ高くない。まず泡盛を知らない人に説明するところから始めたい」と意気込みを語った。バーコンベントの会場ではレストランから問い合わせがあり、オリジナル商品を紹介する英語版専用サイトにも照会が寄せられているという。
沖縄県シンガポール事務所は今後、オリジナル商品をシンガポールだけでなく、所管する同国以外の東南アジア諸国、将来的には中華圏を含むアジア地域全体に展開することを目指す。
池原所長は「まず泡盛をしっかりと訴求することが重要だと認識している。取り組みの効果を十分検証し、次年度以降に銘柄を増やすなどの方策を検討していく」と語った。
琉球泡盛は日本最古の蒸留酒で、独自の文化や風味を持つ。今年3月には、日本政府が泡盛、日本酒、焼酎などを「伝統的酒造り」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に提案した。
沖縄県は、シンガポールを含む域内での琉球泡盛の高付加価値化、ブランド強化を通じて、日本酒、ジャパニーズウイスキーに続く日本発の世界的な酒としての地位確立を目指す。(NNA 清水美雪)
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