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多様な音楽が溶け込む街に 「はままつミュージックバンク」  沼尾波子 東洋大学教授  連載「よんななエコノミー」

2023.10.23

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多様な音楽が溶け込む街に 「はままつミュージックバンク」  沼尾波子 東洋大学教授  連載「よんななエコノミー」の写真

 静岡県浜松市は、〝楽器の街〟として知られる。ヤマハ、河合楽器製作所、ローランドなど世界に名だたる楽器メーカーの本社が立地する。だが、音楽の街かと聞かれると、対外的にはそのようなイメージはあまりない。

 浜松市では地域ブランドを模索する中、音楽の街として、浜松国際ピアノコンクールや、やらまいかミュージックフェスティバルなど、さまざまなイベントを構築してきた。また、世界中の貴重な楽器を収蔵する「浜松市楽器博物館」や「アクトシティ浜松」などの文化施設を整備し、〝音楽の都〟としての環境を整えてきた。

 では、実際に市民生活の中で音楽はどのように息づいているのだろう。そんなことを考えていた時、民間レベルで音楽のプラットフォームを構築する、はままつミュージックバンク(HMB)の活動を知った。

 HMBは、音楽の力や魅力を活用して地域を元気にしたいとの思いとともに、日常的に街のあちこちで演奏シーンが生まれる、そんなワクワクするような「音楽の街づくり」をサポートしたいという人々が集まるプラットフォームである。

 楽器メーカー関係者が多く居住する浜松市には、小中学校から社会人まで数多くの音楽グループがある。身近に楽器や音楽があり、多様な音楽に親しむことのできる街のポテンシャルがある。そこで、いろいろな人が好きな音楽を楽しみながら、音楽が地域の中に浸透していくような街づくりをしようと、志のある人々が集まった。

 メンバーは主婦、演奏家、楽器製作者、フェスティバル運営者などさまざまであり、関心のある音楽のジャンルも多様だという。

 具体的な活動として、音楽を演奏したい人と、演奏してほしい人のマッチングを図る演奏者バンク登録制度の構築。市内各所で自由に演奏できるOKステージの用意。さらに「サンプルステージ」として、演奏をしてみたい人と一緒にOKステージで演奏する機会をつくるなどの取り組みを展開している。

 このほか、福祉や健康などの分野で音楽の活用について考える取り組みや、世界的な演奏家や楽器の作り手の話を聴く講座の開催なども行っている。

 昨年は異なるジャンルの音楽が集まり、演奏を行う市民イベント「クロスオーバー音楽祭」を開催した。ハンドベル、ギター、吹奏楽、演歌、フォークソング、ジャズなど、実にさまざまな音楽が集まった。音楽祭の動画を視聴したが、ラヴェルのボレロを多数の市民がリレー方式で演奏するユニークな演出は楽しめた。今年は「音楽と健康」をテーマに「HMBバンクまつり」を10月22日に開催するという。

 多様な音楽の楽しみ方を用意し、それを媒介として市民が自己実現を図ることのできる街づくりの活動に期待したい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年10月9日号掲載)

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