現場のヤル気が産業を底上げする 赤堀楠雄 林材ライター 連載「グリーン&ブルー」
2023.10.09
林業と言えば、かつては「3K」(きつい・汚い・危険)業種の代表格として扱われ、中山間地の過疎高齢化も影響して慢性的な人材不足にあえいでいた。新卒や中途採用で林業に就く人もいるにはいたが、他の仕事がなく仕方がないからという消極的な理由での参入が多くを占めていた。
ところが、1990年代半ば以降、都会からのいわゆるIターン者を含め、やりがいを求めて林業に就業する人たちが増えてきた。これにはバブル経済が崩壊して経済至上の価値観が疑問視されるようになったことや、環境保全への意識が高まったことなどが背景にある。(写真:重機を操縦して丸太を搬出する女性林業従事者。女性が働きやすい職場環境が林業会でも実現している、筆者撮影)
国も2003年度からは「緑の雇用」事業を開始し、各種研修を実施するなど林業従事者の育成に本腰を入れるようになった。同事業を利用して新規に就業した人は22年度までの20年間で約2万2千人に達している。国勢調査によると、20年時点の林業従事者数は6万1千人とされているので、同事業のインパクトがいかに大きかったかが分かる。
もちろん、就業した人のすべてが定着したわけではない。だが、最初の就職先を辞めても別の職場に移ったり、自ら起業したりして林業に従事し続ける人も少なからずいる。男の職場というイメージが強い中、男性に交じって現場の作業に従事する女性も増えた。
20年ほど前、経営難に陥ったある林業の組織で、内勤者は待遇が維持されているのに、経費節減のために常勤を解かれ、臨時雇用に格下げされた現場作業員たちが反発の声を上げたのを取材したことがある。
結果を言えば、彼らの声は無視され、中心になって動いていた人はその組織を辞めてしまった。その後ずっと音信が途絶えていたのだが、最近ある林業関係の会合でその人と偶然再会した。聞けば、退職後に自分で林業会社を立ち上げ、今は10人以上の作業員を雇っているという。経営は楽ではないが、やりがいのある職場だと思ってもらえるように頑張っているのだと話してくれた。
労災の多発や低賃金など、依然として林業を巡る課題は多いが、こうした人たちが最前線にいることはとても心強い。より良い仕事をしようと思う人が増えることこそが産業を底上げするのだと確信している。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年9月25日号掲載)
最新記事
-
マサバの推定資源量が激減 佐々木ひろこ フードジャーナリスト 連載...
塩焼き、みそ煮、竜田揚げ、シメサバ、南蛮漬け...。定番の家庭料理に人気のサバ...
-
コメ伸び率70%、過去最大 1月物価3.2%上昇 週間ニュースダイジ...
▼原発回帰、再エネ最大5割 温暖化対策で脱炭素推進(2月18日) 政府は国の...
-
少子化で変化する大学の役割 藤波匠 日本総合研究所調査部上席主任研究...
先日、大学入学共通テストが実施されました。志願者数は50万人に少し欠ける49万...
-
まだ終わっていない米騒動 小視曽四郎 農政ジャーナリスト 連載「グ...
真冬だというのに米業界が熱い。雪をも溶かさんばかりに数値が過去最高の記録づくめ...
-
日本産食品、輸入が過去最高 ベトナム 24年24%増、ホタテ100億円...
日本の農林水産省によれば、2024年のベトナムの日本産農林水産物や食品の輸入額...
-
備蓄米3月下旬から店頭 高騰に対処、最大21万トン 週間ニュースダイ...
▼経常黒字、最大29兆円 24年、2年連続増加(2月10日) 財務省が発表し...
-
食いねえ!現代版〝寿司屋台〟 中川めぐみ ウオー代表取締役 連載「...
"本格寿司(すし)のキッチンカー"。全国的にも珍しいこの業態にチャレンジするの...
-
「そらいろコアラ」の距離と時間 沼尾波子 東洋大学教授 連載「よん...
地方新聞47紙とNHK、共同通信社が地域活性化の取り組みを表彰する第15回地域...
-
九州大学発の新興カイコ、ベトナムでブタ用ワクチン大規模実証 NNA
蚕を活用したワクチンを開発する九州大学発の新興企業KAICO(カイコ、福岡市)...
-
農産物輸出初の1.5兆円 週間ニュースダイジェスト(2月2日~2月8...
▼農産物輸出初の1.5兆円 24年、12年連続で過去最高(2月4日) 農林水...