やってミランネ!地域活動 陣内純英 西海みずき信用組合理事長 連載「よんななエコノミー」
2023.05.15
私たちは、長崎県佐世保市内のアーケード商店街にある旧店舗の一部をコミュニティースペースとして提供し、大学生や地域の人たちの活動を支援してきた。こうした方々のたまり場、映画上映会などのイベント、プログラミング勉強会、子ども食堂、ママさんサロン、高齢者カフェなど、活用範囲が広がってきた。
ここを活動拠点にする大学生たちが、このスペースに「ミランネ」と名付けてくれた。「〇〇してごらん!」を長崎弁で言うと「〇〇してみんね!」だが、同じ長崎県でも佐世保弁では、「〇〇してみらんね!」と、「ら」が入ってちょっと優しい響きになる。「ミランネ」は、「ここに来てみらんね!」、「チャレンジしてみらんね!」と前向きの意味を込めたネーミングだ。
先日、地元のFMラジオ局の番組で共演したパーソナリティーが、ミランネの活動をSNSでフォローしてくれて「本当にいろんなことに取り組まれていますね。こんなに多彩な活動ができるのは、若い人のアイデアを『どんどんやってみらんね!』と後押しされているからですよね」と褒めてくれた。
ミランネの活動をさらに広げ、併せて空き家問題にも取り組もうと、最近、佐世保駅近の斜面地の一軒家を取得し、「坂道のミランネ」として運用を始めた。ここで、佐世保市長選候補者によるオンライン討論会のパブリックビューイングを行った。候補者たちは、市が抱える課題をそれぞれの観点から整理し、解決に取り組む姿勢を見せた。しかし、大学生や子育て世代の参加者からは「どうやって解決するのか具体策が見えなかった」との声が聞かれた。(写真:江口航輝氏撮影)
政治家や市役所職員は、課題は分かっていても、解決のノウハウなどを持っていないことも多いだろう。そこで民間の企業家の知見や若者の感性を活用するとよい。私が知る限り、前任地の新潟県三条市や、長崎県でも波佐見町、東彼杵町などはうまくやっているように思う。
一方で佐世保市は、あまりうまいとは思えない。以前、学生たちが地域活動に取り組もうと市役所に相談に行ったことがある。当時の担当者は理解を示しつつも、結局は「学生さんの交通費などの予算取りが来年度には間に合わないので、お願いするにしても再来年度になります」、「公平性の観点から、1人(グループ)の提案をそのまま採用するわけにはいきません」といった答えしか返せなかった。「再来年度には私たちは卒業して、もう佐世保にいません」と落胆する学生の表情を見て申し訳なく思った。
新佐世保市長には、こうした組織の文化を変革し、市役所の各部署が市民のアイデアに対し「やってみらんね!」と後押しできる機動的な態勢を構築してほしい。地元を愛する市民の知見や情熱を完全燃焼させれば、多くの課題が解決に向かうだろう。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年5月1日号掲載)
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