食べる

使い勝手がよい米粉  畑中三応子 食文化研究家  連載「口福の源」

2023.05.08

ツイート

使い勝手がよい米粉  畑中三応子 食文化研究家  連載「口福の源」の写真

 ご飯(お米)を食べる量が年々減少している今日、新たな米需要を広げる突破口として期待したいのが「米粉」である。(写真:米粉のベシャメルソースは失敗がなく、ドリアやグラタン作りのハードルが下がる=筆者撮影)

 日本では上新粉、白玉粉といった米粉が、和菓子の材料として古くから親しまれてきた。米は製粉すると粒子が粗い形状になるため、餅や団子には適しているがパンやケーキにしようとすると膨らまず、利用は限られていた。

 近年、製粉技術の発達でより細かく粉砕できるようになり、用途が広がった。米粉製のパンやスポンジケーキは、小麦粉で作るより風味はさっぱりして食感がもちもちフワフワだと、人気が高い。

 中国のビーフン、ベトナムのフォーと、アジアには粘り気の少ないインディカ種の米粉から作る麺類が豊富だ。日本のジャポニカ種はでんぷんのアミノペクチンが非常に多く、麺に加工すると粘りが強すぎ成形するのが難しかった。その欠点を克服した米粉や、米粉に適した米の品種も開発されている。

 3月に開催されたいくつかの食品見本市でも多種多様な米粉が展示されていたが、気になったのはどれも「グルテンフリー」を強くアピールしていたことだ。

 グルテンとは、小麦粉に含まれるたんぱく質。欧米にはグルテンを摂取すると腹痛、下痢を引き起こすセリアック病の患者が、およそ1%という高い割合で存在するといわれる。加えて、小麦アレルギーやグルテン過敏症への関心も高まり、2010年代になるとグルテンフリーダイエットが爆発的なブームになった。

 それを受け、欧米より厳しい基準の「ノングルテン米粉認証制度」が発足するなど、農水省は国内外での需要促進に努めているが、注目度はそれほど高くない印象。日本ではセリアック病がごくまれなうえ、グルテンを断つと健康になる理由が分かりづらいためだろう。

 グルテンフリーに頼らずとも、米粉は小麦粉にはない特性を持ち、使い勝手がとてもよい。おすすめしたいのが、ベシャメルソース(ホワイトソース)だ。油分が少なくサラサラしている米粉で作ればダマになる失敗がなく、確実になめらかに仕上げられる。小麦粉で作るより風味があっさりして、消化が良く胃もたれしにくいのも魅力だ。

 分量は、牛乳1カップに対し、クリームシチュー程度のゆるい濃度をつけたい場合は米粉10㌘(大さじ1)、グラタンやドリアのソースに使う場合は15㌘が目安。冷たい牛乳に米粉を加え、泡立て器でよく合わせてから弱火にかけ、混ぜながらふつふつと沸騰し、とろみがつくまで炊けば完成。小麦粉で作るときのように最初にバターで米粉を炒めなくてよく、ずっと簡単で時短できる。

 最後に塩、こしょうで味を調え、コクがほしいときはバターを5㌘程度、うま味を補いたいときは顆粒のコンソメを少々加える。牛乳のかわりに豆乳で作ってもよい。甘口の白みそで味つけした和風ベシャメルソースは、ソテーした鶏肉やサーモン、白身魚によく合う。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年4月24日号掲載)

最新記事