普及・研究進むBSC工法 東農大、企業と連携し土地浸食防止
2023.02.03
東京農業大学(江口文陽学長)は3日、神奈川県厚木市の厚木キャンパスで、土壌藻類を利用して土地表面の侵食を防止する「バイオロジカル・ソイル・クラスト(BSC)工法」の適用実験現場を報道各社に公開した。
緑化工法のひとつであるBSC工法は、土壌藻類で作成した資材を、造成工事や斜面崩壊で生じた地面、開発工事で荒れた斜面に散布することで自然植生を早め、表面侵食を防ぐ。周辺に存在する植物が侵入することになるため自然な植生・景観が形成される上、散布資材が安価で、斜面・法面の整形工事がいらないため経済性が高い。
(BSC工法の効果:左から施工前、3カ月後、9カ月後=石垣島、日本工営の資料より)
BSC工法で東農大は、日本工営(東京都千代田区、新屋浩明社長)、日健総本社(岐阜県羽島市、森伸夫社長)の2社と包括連携協定を昨年2月に締結。3者で微細藻類の培養から工事の実施、研究までを分担して取り組んでいる。
(左から新屋日本工営社長、森日健総本社社長、江口東農大学長)
東農大は各地にあるキャンパスや演習林などの施設で、BSC工法の実験を進めており、この日は厚木キャンパス内の崩落斜面に昨年11月に施工した場所について、地域環境科学部森林総合科学科の矢部和弘教授や、日本工営の冨坂峰人沖縄支店技術部長(上の写真)らが現状を説明した。
BSC工法の施工斜面は、繁殖の進まない冬季である上、ここに来ての低温続きで霜柱により土壌が流されているにもかかわらず、一部に成果(写真の緑色の部分)がみられるという。
日本工営の冨坂部長によると、各地で行われているBSC工法の施工面積は、2022年度に計2万平方㍍に達している。今年1月には、政府が国内の社会資本のメンテナンスで優れた取り組みや技術開発を表彰する「インフラメンテナンス大賞」(第6回)で、BSC工法の活用で自衛隊の演習場内の道路法面などを保全したとして、同社が防衛大臣賞を受けた。
冨坂部長と矢部教授によると、BSC工法の課題として、基盤内から剥離が生じる場合の対応や、シカに食べられるといったことが挙げられるが、ヤシ製のネットの利用といった施工法の工夫や、緑化資材の形状の変更、シカが好まない植物の研究などを進め、技術の高度化に取り組んでいる。
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