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函館の真昆布がピンチに  だしのベース、食文化の危機  佐々木ひろこ フードジャーナリスト(Chefs for the Blue代表理事)

2022.12.19

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函館の真昆布がピンチに  だしのベース、食文化の危機  佐々木ひろこ フードジャーナリスト(Chefs for the Blue代表理事)の写真

 「天然真昆布が深刻な枯渇」というショッキングなタイトルを新聞の片隅に見つけたのは、昨年の夏だった。真昆布(マコンブ、写真)の産地、北海道函館市ではかつて年間1000㌧を超える水揚げを誇ったが、1144㌧を生産した2015年度を最後の豊作年に減少を続け、20年度は144㌧、21年度は61㌧にまで落ち込んでいるという。

 ただし、その記事には原因が明らかにされていなかった。全国の海で問題になっている水温上昇が理由なのか、低気圧による高波が問題なのか、それともなんらかの生物の食害が大きいのだろうか。過去数年の不漁は聞こえていたが、ここまでの枯渇は尋常ではない。

 昆布の種類は数あれど、真昆布、利尻昆布、羅臼昆布の3種(時に日高地方で採れる三石昆布を加えて4種)は料理界にとって欠かせない食材だ。和食は、かつお節やさば節、いりこ、トビウオなどとこれらの昆布を組み合わせただしをベースとしており、昆布なしには成り立たない。アレルギーの心配もなく、食の禁忌にも触れない食材ゆえに、近年は日本料理に限らず他ジャンルの料理でも使用頻度が高まっている。

 なかでも真昆布は歴史が長く、14世紀以降、北前船による交易を通じて福井から京都に運ばれ、その後江戸時代に西廻り航路が瀬戸内海に通じてからは、大阪を中心に九州地方までの広い範囲に運ばれ使われてきた。つまり西日本の多くの郷土料理にとっても実に大切な食材だといえる。

 そんな昆布に危険信号がともったとなれば、日本の食文化の未来に与える影響は計り知れない。原因いかんでは、今後他の2種類の昆布にも影響が出るかもしれない。

 だから今夏、「函館に真昆布の収穫を見に行きませんか?」という知人の声がけに、一も二もなく飛びついた。ともに活動しているChefs for the Blue(シェフス・フォー・ザ・ブルー)のシェフメンバーに打診してみると、東京・青山「てのしま」主人の林亮平さん、同・目黒「八雲茶寮」料理長の梅原陣之輔さんがぜひ行きたいと手を挙げた。

 さらに米ロサンゼルスより「Shibumi」オーナーシェフのデイヴィッド・シュロッサーさんの参加も決まり、7月半ば、チームで北海道の函館へと飛んだ。

 次回は私たちが現地の浜で学び、考えたことをお伝えしようと思う。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年12月5日号掲載)

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