食品ロス削減の全国大会 野々村真希 農学博士 連載「口福の源」
2023.12.11
10月は「食品ロス削減月間」だった。食品ロス削減月間は、2019年に施行された食品ロス削減推進法によって定められた月間である。関係省庁や自治体による啓発が活発になり、食品ロスの専門家や実践家も出番が増えて、にわかに忙しくなる月である。
「食品ロス削減の日」というのもあって、こちらは10月30日だ。毎年この日に食品ロス削減全国大会が開かれる。この大会は、自治体と「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」が主催、消費者庁・農林水産省・環境省共催による年1回のイベントで、食品ロス削減推進表彰の表彰式や市民向けトークショー、パネルの展示などが行われる。
この際だからついでに紹介させてほしい。全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会は、食品ロスの削減を目的として設立された自治体間のネットワークで、全国の440自治体が参加している。毎年公表される全国自治体食品ロス施策集などは貴重で有用、ウェブサイトは地味だけれど、なかなかにいい仕事をされている。
食品ロス削減推進表彰は、消費者庁と環境省が毎年実施しており、食品ロス削減の推進に資する優れた取り組みを行った人・事業者を、審査を経て表彰するものである。今年は、生産・流通・消費と各方面で食品ロス削減に取り組む「オイシックス・ラ・大地」(東京)や、店舗での「てまえどり」呼びかけを全国に先駆けて行ってきた生活協同組合コープこうべ(神戸市)などが受賞した。
食品ロス削減全国大会の話に戻そう。今年は第7回大会が金沢市で開催され、同市内で食品ロス削減を実践する実務家のトークセッションが行われた。
登壇者の1人は、農事組合法人Oneを経営する宮野義隆さん。宮野さんはこれまで、小さいジャガイモや二番果のトウモロコシは採算が合わないので収穫せずそのまま畑にすきこんでいたのだが、地元のお母さん方との会話をきっかけに、自分の畑をみんなに開放し、そうした小さいジャガイモや二番果トウモロコシを来た人自身に収穫して持って帰ってもらう、という取り組みをはじめた。宮野さんがそれを「アクティビティー」「遊び」とポジティブな言葉で語っていたところが、特に印象的だった。
同じく登壇者だった「旬彩和食口福」店長・中里知さんと、食マネジメント専門職大学・野村京子さんも、そのままでは食べられない食材や傷みの早い食材を保存食や発酵食としておいしくいただく、加賀の食文化を紹介してくれた。
ああ、食品ロスの削減は、単なるミッションではなく、新たな価値を生み出す可能性を大きく秘めているのだなと思った。取り組みがもっと広がった先には、もったいないものが減るだけでなく、面白いもの・ことがきっと増えているだろう。それがすごく楽しみになった大会だった。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年11月27日号掲載)
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