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エクセル入力で温室効果ガス算出  農家用ツール登場  前田佳栄 日本総合研究所創発戦略センターコンサルタント

2022.11.28

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 気候変動の緩和策として、温室効果ガス(GHG)の排出量削減が喫緊の課題となっている。その一環として、企業に求められているのが「サプライチェーン排出量」の算定である。

 サプライチェーン排出量とは、事業者自らの排出だけでなく、原材料の調達・製造・物流・販売・廃棄など事業活動に関係するあらゆるGHGの排出量を合計したものを指す。企業の排出責任は、事業者自らの直接排出(Scope1)、他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)に加え、それ以外の間接排出(Scope3)を含めたサプライチェーン全体にまで拡大している。特に、食品関連企業においては、Scope3の中でも原材料の農産物調達に係る排出量の算定及び削減が注目されている。

 農産物の調達に係る排出量の算定方法について、現在の主流は、調達量や調達金額ごとに決められた排出原単位を活用する方法である。例えばコメであれば、生産や販売の取り引きデータが分かる産業連関表をベースに、「購入者価格100万円当たり5.37t-CO²eq」(CO²換算値5.37㌧)といった排出原単位が設定されている。

 この方法では、農業現場での工夫が反映されないという課題がある。農業現場では、化学肥料や化学農薬の使用量削減、有機肥料やバイオ炭の施用、水稲での中干し(夏に水田の水を抜き、土にヒビが入るまで乾かす作業)期間の延長など、排出量を減少させる技術が多くあるが、現在の算定方法では、一律の排出原単位が設定されているため、栽培方法を反映した正確な排出量の算定は困難である。

 状況を打開するため、農林水産省は今年9月に農業生産段階の温室効果ガスを算定できる「温室効果ガス簡易算定シート」を公表した。エクセルシートに農業生産段階での農薬・肥料をはじめとする資材の投入量や農業機械や施設暖房といったエネルギー投入量などを入力すると、排出量が算定される仕組みだ。

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(データ入力で算定される結果のイメージ=農水省資料から)


 現時点ではコメ、トマト、キュウリの3品目に対応しており、対象品目は徐々に拡大される見通しとなっている。このシートにより、排出量削減に向けた技術導入を積極的に行っている農業者の努力や成果を正しく反映することが可能になる。

 ただ現時点では、農業者自身が使用量の実績をとりまとめてエクセルシートへ手入力する必要がある点で、ハードルとなっている。将来的には、作業日誌アプリ・会計アプリ・各種スマート農機などで入力・取得済みのデータを自動で集計・入力・算定するようにすることで農業者の手間を削減することができる。データの正確性やリアルタイム性も向上でき、農業者にとっても食品関連企業にとっても使い勝手のよいツールになると期待される。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年11月14日号掲載)

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