米食は良いことずくめ 安武郁子 食育実践ジャーナリスト 連載「口福の源」
2023.11.27
新米のおいしい季節。この時期、店頭に並ぶお米の袋には「新米」の文字が踊っています。皆さんは、お米のおいしさを味わっていますか? 近年、炭水化物ダイエットや糖質制限が流行(はや)り、病気ではないのに食事制限を行い、お米を避け、「お米は太る」と思っている人も少なくありません。(画像:コメかみさま©食育推進団体イートライトジャパン)
誤った情報や食べ方の変化により、お米の需要が減少しています。お米は日本の食文化の一部であり、私たちの食卓に欠かせない存在です。お米のおいしさや魅力を知ることは日本の農業と伝統を支える一環ともなります。
もしも、お米が太る要因であるなら、昔の日本人は今より肥満が多かったはずです。なぜなら、1960年代のお米の消費量は、現在の2倍以上だったからです。しかし、肥満率は今のほうが断然高いことからも、お米が太る原因ではないことに気づく必要があります。肥満の原因は、食べ方。50年ほど前に比べ、柔らかい食べ物が増え、味付けも変わり、かむ回数が半減しています。お米を味わうこともなく、かまずに流し込むように食べていないでしょうか?
お米はかめばかむほど甘くなります。このお米の甘さを感じていますか? お米を炊くと、お米のでんぷんはアルファー化(糊化)し、粘り気と糖化が促されるため、さらに甘く感じます。そして、口に入れると唾液に含まれる消化酵素の働きで「マルトース(麦芽糖)」という成分に変化し、甘味がさらに増します。唾液は、よくかんで食べることで分泌が促されるため、かむほどにでんぷんとの結合が強くなります。お米の甘味を感じることができたら、しっかりかんで食事ができたことになります。
良食は難しいことではありません。まず、一口一口を意識して味わってみたらどうでしょう。味わいを楽しむことが大切です。新米の季節に、新鮮なお米のおいしさを感じてみてください。口に運ぶたびに、お米の香りと食感を楽しんでください。食べ方が変わるだけで、お米の違ったおいしさを感じることができるでしょう。
意識して食べると、脳の働きを活発にするほか、歯の病気を防ぎ、胃腸の働きを良くするなど、体に良い効果があります。かんで消化酵素が分泌されるほどに、アンチエイジング効果も高まります。また、少量でも満腹感を感じられるようになるため、肥満予防にもなるなど良いことずくめです。
新米の季節、お米の味わいに敬意を表し、食べ方を変えるきっかけにしてみてください。それが新たな口福の発見につながることでしょう。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年11月13日号掲載)
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