免疫強化、ダイエットでトレンドに プロテイン食品、取りすぎにリスクも 畑中三応子 食文化研究家
2022.11.07
いま「空前のプロテインブーム」だといわれる。たしかにこの1、2年、スーパーやコンビニの棚にはパッケージ表側の目立つ場所にタンパク質量を表示する食品がやたらと増えた。以前、数値を出してアピールしたのはカロリーの低さと食物繊維の多さだったが、トレンドは完全にタンパク質に移っている。
総称して「プロテイン食品」と呼ばれ、菓子、ドリンク、ヨーグルト、シリアル、魚介練り製品、ソーセージ、カップ麺、弁当...と多種多様。代表的なのが「プロテインバー」だ。
チョコレートを使った商品が主流だが、グラノーラ、クッキー、ソーセージなどもある。常温で保存でき、軽いので持ち運びしやすい。片手で手を汚さず、スマホをいじりながら食べられるので、若い世代に人気だ。(写真:タンパク質の多さをアピールする各種プロテイン商品=筆者撮影)
要冷蔵の「豆腐バー」と「サラダチキンバー」は、おかずにも、おやつにもなる。豆腐バーは味は純和風で、身が詰まってしっかりした食感。1本で豆腐半丁分のタンパク質を含む。
一方で世界に目を向ければ、世界人口は2020年の77億人から30年間で20億人増加する見込み。これまでパンやコメなどの穀物食品からタンパク質を摂取していた新興国の人々が、経済発展につれて肉と魚介類をたくさん食べるようになり、地球規模のタンパク質不足が懸念されている。そんな状況下、なぜタンパク質がこれほどのブームになったのだろうか。
理由は大きく三つ。一つはコロナ禍で、免疫強化の働きを持つタンパク質をたくさん取ろうという意欲が高まった。二つ目が、コロナ太り解消のダイエット目的。筋トレやストレッチなどの運動後に取ると筋肉量が増えて代謝が上がり、太りづらい体になるとされる。かつてはボディービルダーやアスリートが筋肉増強のため摂取するのが主だったが、利用者が広がった。
三つ目が、フレイル(加齢による心身の活力低下)とサルコペニア(筋肉量が減少していく老化現象)の予防。健康寿命を伸ばすため、高齢者が積極的に取るようになった。
あんまりタンパク質の大切さを聞かされると、第2次大戦後に厚生省(当時)が推進した栄養改善運動の再来かと思ってしまう。当時の炭水化物に偏っていた食習慣を改め、国民の健康を増進するため「タンパク質をとりましょう」が標語になった。
太平洋戦争前に制定された「国民食栄養基準」を見てみると、1日に必要なタンパク質量は成年男子が80㌘、女子が65㌘になっていて、15〜64歳男性の推奨量を65㌘、女子は50㌘とする「日本人の食事摂取基準2020年版」より多い。昔からタンパク質が重視されていたことが分かる。
だが、普通の食事でタンパク質を取るのはそんなに難しくない。卵かけご飯に納豆をのせるだけで18㌘以上。調理した牛・豚・鶏肉には100㌘当たり25〜30㌘含まれる。こうして朝昼晩と20㌘ずつ取れば、それで十分だ。
タンパク質は一度に消化吸収できる量が限られ、過剰摂取すると腎臓や肝臓に負担をかけるリスクがあるそうだ。ブームだとはいえ、気にしすぎて取りすぎないよう、ご用心を。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年10月24日号掲載)
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