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「磯焼け」対策で養殖ウニを特産化  地域資源生かし生態系回復  前田佳栄 日本総合研究所創発戦略センターコンサルタント

2022.10.17

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「磯焼け」対策で養殖ウニを特産化  地域資源生かし生態系回復  前田佳栄 日本総合研究所創発戦略センターコンサルタントの写真

 沿岸の浅海域でコンブ、ワカメ、アマモなどの海藻や海草が繁茂する藻場は、多くの水生生物の生活を支え、産卵や幼稚仔魚に成育の場を提供する役割を担っており、海水の浄化にも貢献している。近年の温暖化などにより、この藻場が大規模に消失する「磯焼け」と呼ばれる現象が全国で問題になっている。(写真はイメージ)

 磯焼けは、アイゴ・ブダイといった魚類、ウニ、小型巻貝など、海藻を食べる植食動物による影響が大きい。温暖化によって水温が上昇すると、これらの植食動物は盛んに摂餌活動を行い、大増殖する。

 ウニや巻貝は飢餓に強いことから、餌となる海藻が減少しても、成長不良のまま生き続けることができ、わずかに残っている海藻の芽生えさえも食べてしまう。

 その結果、生態系のバランスが崩れ、藻場の消失につながるというサイクルだ。また、水温の上昇により、海藻が枯れてしまうことも一因とされている。

 ウニが増えるのであれば、食用にすればよいと思うかもしれない。しかし、餌の足りていない生育不良のウニは、身が入っておらず商品価値がないため、漁の対象にはならない。磯焼けの回復に取り組む多くの地域では、潜水士、海女、ボランティアのダイバーなどが、ウニを一つ一つ棒で突くなどして駆除しているのが現状だ。

 このような問題を解決すべく、地域資源を生かして捕獲したウニを養殖することで、新たな特産品を生み出している地域がある。神奈川県ではムラサキウニに三浦特産のキャベツを与えた「キャベツウニ」を販売。また、愛媛県愛南町では、地域で栽培されてきたブロッコリーと愛南ゴールド(河内晩柑)を利用して「ウニッコリー」の養殖に取り組んでいる。

 ウニッコリーは、ガンガゼという種類のウニを利用している。天然のガンガゼは可食部が少なく苦味やえぐ味があったため商品にならなかったが、ブロッコリーを与えることで苦みやえぐ味が抑えられ、甘味のあるまろやかな味になった。

 加えて、出荷前に愛南ゴールドを与えることで、ほのかなかんきつの香りの付いたウニに仕上がっている。なお、ブロッコリーは出荷時に切り落とされる茎の部分や出荷規定に合わないもの、愛南ゴールドは出荷前に自然に落下したものを集めて利用するなど、地域資源をうまく活用した取り組みとなっている。

 魅力的な商品の開発に成功する地域はあるが、磯焼けの回復に向けた取り組みには手間やお金がかかる。磯焼けの回復に取り組む地域を支援する方法としては、ダイビングのライセンスを取得し、ボランティアとしてウニの駆除に参加するだけでなく、クラウドファンディングや専門団体向けの寄付などを行うことも有効である。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年10月3日号掲載)

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