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伸びるウオーターサーバービジネス  給水型、POUがけん引、参入拡大  熊野美緒 矢野経済研究所フードサイエンスユニット研究員

2022.05.13

伸びるウオーターサーバービジネス  給水型、POUがけん引、参入拡大  熊野美緒 矢野経済研究所フードサイエンスユニット研究員の写真

 家庭や事業所が設置したウオーターサーバー向けに水を届ける宅配水ビジネスの市場規模は、2021年度に1616億円となり、前年度から4.8%拡大したとみられる。宅配水市場は11年の東日本大震災後に、水道水への不安や備蓄意識の高まりをきっかけに急成長した。

 宅配水はミネラルウオーターを小売店で購入するのとは異なり、温水と冷水を使い分けられる簡便性や、重い水を購入店舗から運ばなくてすむ便益を消費者に訴求することができ、水が生活水として定着する中で成長を続けてきた。 

 21年度の宅配水市場は、コロナ禍の影響があり在宅勤務が進み巣ごもり需要が発生したことで、前年度と同様に法人向けは低調となり、個人向けは一人当たりの水の使用量が21年秋ごろまで多い状況となった。

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出ている間は、ビラ配りや試飲の自粛を求められることもあったため、ショッピングモールや家電量販店でのデモンストレーション販売が行いにくい状況だった。

 そうした中でも業界の上位企業は、営業態勢の強化や効率よく販売する戦略を立てるために販売データを管理する社内システムの改善を進めた効果があり、個人向けの新規顧客の獲得が着実に進んでいる。

 しかし近年、宅配料金の値上げや新規顧客獲得コストの上昇が業界の課題となってきており、事業者が注目しているのが、①ウオーターサーバー本体に水道水を引き込み、内蔵したフィルターで浄化した水をタンクに貯めて使う「水道直結型ウオーターサーバー」(POU)②使用者がサーバー本体に水道水を注ぎ、内蔵フィルターで浄化した水をタンクに貯める「給水型ウオーターサーバー(浄水器一体型ウオーターサーバー)」ーといったサービスである。

 これらは水のボトルを定期的に配送する必要がないため、宅配料の値上げの問題の影響を宅配水ほどは受けない。ボトルを使用しないことから、環境に良いという面もある。

 加えて、宅配水に比べて商品価格が安いため、自社の顧客を他社に逃さないという観点からも、POUや給水型ウオーターサーバーを取り扱い始める企業、取り扱いを検討している企業が増え始めている。近年参入した企業としては、プレミアムウォーター、Kirala、コスモライフ、富士山の銘水、ナックが挙げられる。

 これらの企業は宅配水のシェア上位企業であり、営業力もある。参入企業の一部には、コロナ禍で伸長する個人向け宅配水の新規顧客獲得に注力したいという考えや、宅配水工場の稼働率下降・利益率低下を避けたいとして、POUなどには熱心に取り組まず、顧客流出を防ぐためのサービスメニューにとどめるという考えもみられるが、最近参入した企業は特に給水型ウォーターサーバー市場の拡大をけん引しており、デモ販売などに活発に取り組んでいる。

 給水型ウォーターサーバーの出荷台数は、20年度は7万台程度だったが、21年度は約3.6倍の25万台になったとみられる。現在は消費者の認知度が低いが、広告などにより改善され、今後新規の獲得がさらに進むとみられる。

 宅配水の国内利用率は、矢野経済研究所が20年12月に実施した消費者調査では5.4%であった。業界では海外の宅配水利用率を踏まえて、今後、POUや給水型ウオーターサーバーも含めたウオーターサーバービジネスとし、その利用率を20%程度まで伸ばしたいとの声が多く聞かれる。

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