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「書評」日本農業の課題を知る入門書  「そのとき、日本は何人養える?」(篠原信)

2023.03.05

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 本書の要点は、第1章の「日本は何人養える?」に集約されている。「コメはほぼ完全自給している」「経営規模の拡大で効率化すれば生産を増やせる」などさまざまな楽観論を一問一答の形式で論破し、「国内の生産力では3000万人分の食料しか作れない」という結論に導く。

 第2章以下は、飢餓や貧困の構造、「石油漬け」の日本の農業生産の現場を解説し、「飢餓は食料が足りないから起きる」という通説の誤りを指摘する。3000万人分の食料しか国内で生産できないというシミュレーション自体に意外感はない。むしろ、労働力や農地面積の減少を考えると、もっと少ないだろう。

 日本の国内生産力のぜい弱さは常識であり、問われているのはどうやって国内生産を強化するのかだ。本書はこの根本的な課題には答えていない。著者は後書きで「(解決策や提言ではなく)視点を提供することに徹した」とし、著者の問題意識として「浪費をしないで消費を増やせるか」と投げかけるのにとどめている。生産ではなく消費側に課題を問うのは重要な視点であり、深掘りしてほしかった。

 ただ、誰でも入手できるデータをもとに単純・明快な論理で説いており、塾の子どもたちに語りかけるような分かりやすさだ。日本の農業の現状と課題を知る上で優れた入門書だ。家の光協会発行、1650円(税込)。