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「書評」国土形成を考える  「日本のコメ問題 5つの転換点と迫りくる最大の危機」(小川真如 )

2022.09.13

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 本書の主題はコメというよりは「国土形成論」だ。7章のうちの最初の5章を戦後のコメ政策の時系列的な概観に充て、コメ不足から脱却し、コメを作らせない政策への転換、コメの流通の自由化など5期に区分し、それぞれの政策を解説している。

 入門書として手軽だが、コメ政策の研究には壮大な蓄積がある。大河ドラマの総集編を倍速モードで鑑賞するようで、複雑なコメ政策への理解を深めるには物足りない。ただ最後の6章と7章を読むと、著者が費やした最初の5章は、「コメ余り」と「田んぼ余り」がまったく別の問題であると強調するための、長すぎる「序章」だと理解できる。

 コメ余りの矛盾を「コメをつくらせない政策」によって「田んぼ余り問題」に転じさせ、さらに「田んぼ余り問題」を「政策根拠としてはぼんやりとした多面的機能や食料安全保障問題」に付け替えようとしている、というのが著者の見立てだ。

 この認識が正しいかどうかは別として、「荒れた農地がある風景は、食料が足りなかった時代からみれば、これほど豊かな光景はない」という指摘は、「耕作放棄地=悪」と思い込んで思考停止している人たちにとっては新鮮だろう。

 著者は「迫り来る最大の危機」として、日本の人口減少でいずれ顕在化する「農地余り」を挙げる。「食料安全保障上、必要な農地」が実際の農地より小さくなる時期が、早ければ2051年から52年、遅くても86年から87年に訪れると試算した上で、「余る前にビジョンを描く必要がある」とし、余り始める農地をどのように使うことが真の豊かさにつながるのか、どのような国土を目指すのか、国民がそれぞれ考えるべきだと問いかけている。中公新書、1056円。