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「研究紹介」 穀物価格は中期的に弱含み  新型コロナの感染拡大で  農林水産政策研究所

2021.08.08

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 新型コロナのワクチン接種が進んでいるが、新たな変異株の流行などで感染の拡大がなかなか収まらない。先行きを見通すのは難しいが、国際的な食料需給に対して、コロナ禍は中期的にどのような影響を与えるのだろうか。

 農林水産政策研究所レビュー(No.102=2021730日)に掲載された「2030年における世界の食料需給見通し-COVID-19パンデミック等の見通しへの影響-」によると、コロナ禍の影響は各国まちまちだが、全体としては経済成長が感染拡大前の想定と比べると鈍化し、穀物需要の回復は力強さに欠け、穀物などの国際価格は弱含みの傾向をより強める見通しだ。

 バイオ燃料による需要の下支えや、アジア・アフリカなどの人口の増加、新興国・途上国を中心とした食用・飼料用需要の増加は中期的に続くものの、著者の古橋元上席主任研究官は「過去10年程度の飼料用の伸びに比べると大きく低下する」と指摘している。特に、コメは主要な輸入地域となっているサブサハラアフリカや中東などでの経済成長の鈍化傾向が強まり、将来における実質価格の低下につながる可能性があるという。

 一方、ワクチン接種などの効果で経済が急回復する場合、「短期的には穀物等の価格が高騰する上振れリスクも懸念される」と予想している。古橋研究官が指摘するように、デジタル・トランスフォーメーションによる生産・消費構造の変化や、持続可能性を重視した農業生産への転換などの影響にも、目配りが必要だ。いずれにせよ、不確実性が高まっており、食料需給見通しは従来と比べて格段に機動的な修正が求められるようになるだろう。