食料安保重視へかじ切る中国 農林水産政策研究所 百崎賢之上席主任研究官
2021.06.07
中国政府が食料政策を大きく転換し、自給力を高める気配を強めている。年内に「食糧安全保障法」を制定する計画を公表したほか、昨年9月には豚肉の自給率を「95%前後」とするなど、新たに畜産物の自給目標を設定した。
今年2月22日には2021年の最重要課題を列挙した「中央1号文件」に「食糧安全」(日本語の食料安保に相当)を盛り込んだ。もちろん背景には、米国との対立の激化がある。
農林水産政策研究所レビュー(No101=21年5月)に掲載された『中国の食糧需給と「食の安全保障」』の中で、百崎賢之上席主任研究官は「(中国は)食糧安全保障(再)重視へ大きく舵を切ったようだ」と指摘。過剰生産を縮減する政策を転換し、かつての自給自足に回帰する兆しを紹介している。
「国際的大食糧商・農業企業集団」を育成する動きもあるという。中国版の食料メジャーを構築し、「食料覇権」の確立を目指すのか。食料版の米中デカップリングがどこまで進むのか。今後を見通す上で、とても参考になる。