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「研究紹介」 JAは災害復旧の結節点に  「自助・共助・公助」を再考  農林金融2021年5月号から

2021.05.21

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  東海地方以西は例年より1カ月近い梅雨入りとなり、毎年のように繰り返されている「数十年に1回」の大規模豪雨災害が心配だ。

 土砂がれきの撤去などに取り組むボランティア活動は、住居など生活再建が優先され、営利活動の設備とみなされる「農地」は支援の対象にならないことが多いが、農家にとって農地は生活そのものだ。

 農林中金総合研究所の「農林金融5月号」は、「地域農業の維持・回復に向けて」を特集し、野場隆汰研究員が「豪雨災害地域の農業復興に果たす農協の役割」の中で、2017年の九州北部豪雨による被害からの回復で農業協同組合(JA)が果たした役割を報告している。

 JA筑前あさくらは、迅速に対策室を設置して支援の窓口を一本化、NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と連携し、農業ボランティアの募集・派遣を円滑に進めた。柿などの果樹は、収穫を再開できるまで数年必要なため、アスパラガスの栽培・出荷など当面の収入を確保できる作物を導入できるように、2年間の支援を続けた。

 災害などからの復旧について、政府は「自助・共助・公助」と強調するが、菅義偉首相が「最終的には生活保護」(今年127日の参院予算委員会)と述べたように、「まず自助、最後に公助」という位置付けだ。

 野場研究員は、こうした発想を「階層性を持った考え方」と批判、災害復興で効果的に支援するために「それぞれが有機的に連携すること」と指摘する。単なるJAの活動報告ではなく、支援内容を分析し、「JAは自助・共助・公助の結節点として機能できる」という提言を含んだ研究だ。

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