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コロナ禍で「おにぎり」苦戦  コメ余りの要因にも?  AFCフォーラム1月号から 

2021.01.14

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 新型コロナウイスルスの感染拡大で、日本人のソウルフードとも言える「おにぎり」の消費が低迷し、コメ余りの要因になっている―こんなユニークな推計が日本政策金融公庫の月刊誌「AFCフォーラム」の 2021年1月号に掲載された。

 食材の宅配業「オイシック・ラ・大地」(東京)の阪下利久氏の寄稿「消費行動から食の変化を読み取る」によると、在宅勤務の増加やインバウンド(訪日外国人)の減少で商業地に立地するコンビニは大きな打撃を受けており、特に定番商品の「おにぎり」の販売は、ピーク時と比べると25%減少している可能性がある。

 コンビニ大手3社で年間50億個販売、おにぎり1個でコメ50㌘を使うと仮定すると、コメの消費量は年間6万㌧減少する。この数年、コメ全体の国内消費は年間約3万㌧減少しており、およそ22年分に相当する規模だ。

 おにぎりの需要は、在宅勤務の増加や幼稚園の休園で家庭用も減少、行楽の機会も減っており、目立たないがコロナ禍の影響が極めて大きい食品と言えそうだ。

 調査は、ネット検索サービスのグーグルで食に関わるキーワードが検索された回数を分析、04年1月から20年10月(コロナ禍第3波前)の推移を調べた。「ディーナー」「ランチ」「パーティー」「レストラン」など外食関連の言葉の検索数は、20年4月の緊急事態宣言を受けて急落したが、その後は底を打って回復基調だ。

 一方、「コンビニ」「おにぎり」は緊急事態宣言による影響が比較的小さかったものの、回復も鈍い。「サンドイッチ」も減少しており、レタスの相場下落の要因になっている可能性がある。

 逆に、コロナ禍で伸張したキーワードは、「直売所」「ウエブ通販」「CO・OP(生協宅配)」「ふるさと納税」などで、「キュウリ」「ホウレンソウ」「ウナギ」なども前年同月比で30%以上増えている。家庭での調理や通信販売の利用が増えたのを反映しているとみられる。

 この寄稿は同誌の特集「コロナが変容させる消費」の1本で、中島康博東大大学院教授は「この混乱期に食のあり方を見つめ直す」を寄稿。総務省の家計調査を分析して、内食(家庭内調理)、中食、外食の変化を浮き彫りにしている。特に2人以上の世帯と単身世帯の間では大きな違いがある点が興味深い。

 食品ジャーナリストの小澤弘教氏の「食卓のインフラに存在感を増す量販店」は、マルエツ(東京)と京北スーパー(千葉県柏市)を実例に、リアル店舗とデジタルコミュニケーションの融合に取り組むスーパー業界を紹介している。