Z世代の力 森下晶美 東洋大学国際観光学部教授 連載「よんななエコノミー」
2024.11.11
今年9月、東京ビッグサイトにおいて「ツーリズムEXPOジャパン2024」が開催された。ツーリズムEXPOとは、観光関連の産業団体と日本政府観光局などが主催する世界でも最大級の旅行展示会で、国内外の観光地や観光関連産業が商談と観光PRのために年に一度集結する。今年は海外80の国と地域、1384の企業・団体が出展し、26日からの4日間で一般客を含め18万3千人が参加する大規模なものとなった。(写真:ツーリズムEXPOジャパン2024の東洋大学ブース)
手前味噌(みそ)な話で恐縮だが、このEXPOにおいて、我が東洋大学国際観光学部が一般参加者投票でブースグランプリの「実行委員長賞」を受賞した。出展ブースは、世界規模の祭典にふさわしくハワイ政府観光局などの各国観光局や日本航空、JTBといった大企業が多く、華やかなブースでPRを繰り広げる中で、予算のない地味な大学の小ブースが受賞したのは異例のことである。
この勝因はただ一つ、学生の力である。展示会での大学のPRというと受験生獲得のためと思われがちだが、観光関連産業や団体が集まるこの場を我々は〝企業などに学生を買っていただく機会〟と考えた。つまりPRする商品は〝学生〟、自慢の商品を将来の企業採用につなげようというものである。したがってブースでの展示はゼミ活動の研究発表のみ、11のゼミナールの学生が「海外旅行活性化策」「景観に映える美術館を観光スポットに」「江田島で楽しむ持続可能なエコツーリズム」「成田空港第3ターミナルの活性化策」など、観光をテーマとしてポスター利用の口頭発表を行った。
多くの観光関係者や一般客に自分たちの研究を聴いてもらえるとあって、学生のモチベーションは高く、EXPOはゼミ活動の一つの目標でもあった。また、ブースの飾りつけや備品の調達、スケジュール調整などの運営はほぼ学生が担い、教職員は遠巻きに見ていただけなのだが、手作りの地味なブースでも熱心な誘客で大企業に引けを取らないほど多くの人たちに来訪していただいた。投票者のコメントには「説明が熱心かつ丁寧で、学生が観光のことについてしっかり考えていることが伝わった」というものもあり、学生の努力が評価されたことがよく分かる。
金なし、経験なし、地味な素材(研究発表)、という三重苦であっても熱意と工夫次第で人を惹(ひ)きつけられるものだとあらためて感心した。この学生たちはまさにZ世代(α世代とも)、何かと話題になることの多い世代だが、その力、やはり侮れないかもしれない。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年10月28日号掲載)
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