「水産未来サミット」は危機感から開かれた 中川めぐみ ウオー代表取締役 連載「グリーン&ブルー」
2024.04.22
「日本の水産業を本気で改革したい人は、この指とまれ!」(写真はイメージ)
ある1人の水産関係者の呼びかけに応えて、北海道から沖縄まで全国の熱意ある水産関係者たちが100人以上も集まったのは、3月半ばの宮城・気仙沼。「第1回水産未来サミット」と銘打つこの会に、筆者も運営メンバーの1人として参加しました。
水産業界以外の方からすれば、そもそも"本気の改革"なんて大げさに感じるかもしれません。しかしこの連載でもお伝えしてきたように水産業界は多くの課題を抱えており、このままでは魚不足、漁師さん不足で、自由に魚が食べられない未来がそこまで来ています。
その要因として見聞きするのは温暖化などの環境問題が多いと思いますが、実は表に出にくい深刻な要因として「乱獲」「密漁」「違法輸入」などがあり、生活者の手元に届く海産物の何割かはそうした要因に関連するものだというデータもあるのです。
持続可能な水産業を真摯(しんし)に守ろうとする人たちがいる一方で、必ずしもそうではない人がいます。しかも短期でみると、そうではない人のほうが得をしている現状。これでは未来に良い形で水産業を受け渡すことなどできません。水産の現場にいると、そんな苦しい状況や危機感が見えてきます。
この問題はあまりに大きく、一個人、一地域で解決できるものではありません。だから全国で同じ志を持つ水産関係者たちが集い、共に日本の水産を未来に残せるものへ改革しなくてはいけない! そんな思いで始まったのが、このサミットなのです。
初回は、各地の実践者・有識者によるパネルディスカッションや、数人ごとに分かれて全員が意見を出し合うグループワークなどを1泊2日で実施。今後はその中で実現しようとなった数案を、発案・賛同した水産関係者を中心に運営メンバーがサポートしながら進めていきます。またサミット自体も年に1回のペースで開催を予定しており、次回は鹿児島県での開催が決定しました。
ここでお伝えしたいのは、実はこの活動の着地は「生活者の理解・賛同」がないと、どうにもならないということです。なぜなら実際に海産物に価値を付ける(購入する)のは生活者だからです。
漁師さんが持続可能な漁を目指しても、生活者がそれを受け取ってくれないと持続することができません。
むしろ生活者である私たちがそろって「資源管理や法律を守った海産物しか買いません」と表明する日が来たら...。日本の水産はガラリと姿を変えるでしょう。
そのためには、まず生活者にきちんと現状を伝えていく必要があります。そもそも情報がなければ、選択することさえできないからです。筆者にできることも、まさにそこから。個人として運営メンバーとして情報発信から継続し、日本の未来の水産業に貢献していきたいです。(Kyodo Weekly・政経週報 2024年4月8日号掲載)
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