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8番、コスパで圧倒的地位 日本食店、タイの地方に広がり  NNA

2024.03.01

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8番、コスパで圧倒的地位 日本食店、タイの地方に広がり  NNAの写真

 タイの日本食ブームが地方へと広がっている。国内の日本食店の数は2023年に5751店となり、うち40%にあたる2299店が首都バンコクと近郊を除く地方都市で営業する。バンコクとの所得差から地方では価格設定が課題となるが、1992年進出の「8番らーめん」は1杯100バーツ(約416円)の圧倒的なコストパフォーマンスでタイ人の心をつかみ、50県以上で計159店を出店している。(写真上:全土に159店を構える8番らーめん=2月、タイ・バンコク、NNA撮影)

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 8番らーめんはハチバン(金沢市)が北陸3県を中心に1960年代から展開するラーメンチェーンだ。石川県や富山県の出身者が「北陸のソウルフードだ」と語るほど、地元に浸透している。

 ハチバンの取締役で海外事業部長を務める清治洋氏によると、タイでは地場企業とのフランチャイズ契約を通じて店舗を展開。30年以上かけて店舗を増やし、タイ人からも「ラーメンといえば8番」と言われ、「8番は日本発祥ではなくタイのものだ」と勘違いされるまでになった。

■価格はハードル


 日本食レストランは一般的に、タイ人が日常使いする飲食店に比べると値段が高い。ただ、タイ人経営のリーズナブルな店も増えているようで、日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所のまとめによると、地方の日本食レストランの客単価は6割以上の店で250バーツ以下となっている。

 NNAが地方在住者を対象に行った日本食店での消費額の調査では、7人中5人が「1人当たり300バーツ以上」と回答。一方で日本食店に行く頻度は大半が「月1回未満」と、「たまのぜいたく」に位置づけられている可能性がうかがえる結果だった。

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 日系ではラーメン店でも客単価が250~300バーツのラインを超えるチェーンが多く、地方出店では価格設定はハードルになるとみられる。チュラロンコン大学ビジネススクールのクリティニー・ポンタナラート助教(マーケティング専門)は「地方においては価格の手頃さが重要だ」と指摘。「安ければ安いほど良い」と考える消費者も多いとの見方を示している。

■100バーツでおいしいラーメン


 8番らーめんは全159店のうち50店以上が首都圏外にあり、北はタイ最北のチェンライ県から南は深南部ハジャイ(ソンクラー県)にまで店を構える。1月末には、農業が盛んなことで知られる北部ナコンサワン県に新店を出した。

 清治氏は、100バーツという手頃な値段で「タイ人においしいと思ってもらえるラーメンを出していること」が成功の秘訣だと語る。8番の基本は、日本でもタイでも麺の上に野菜をたっぷりのせた野菜ラーメン。スープはとんこつベースの「ぱいたん」、みそ、しょうゆなどがありいずれも1杯100バーツ前後だ。このほか、メンマやチャーシューが乗った「8ちゃん麺」は83バーツで提供している。

 1杯の値段は日本円に換算すると400円前後だが、日本では野菜ラーメンを1杯726円(税込み)で出している。清治氏は「他の日系チェーンはタイでの値段を円建てにすると日本の店より高くなるが、当社は日本より断然安い。だからこそ、地元の人も通ってくれる」と胸を張る。

 過去30年間、麺料理を出すローカル食堂などと比較しても、値上げ比率を抑える努力をしてきた。そのため、ローカル麺との価格差も「徐々に縮まりつつある」という。

■一番人気はトムヤム


 タイの8番らーめんは、北陸出身者から「日本と同じおいしさ」だとお墨付きを得ている。一方で、日本のラーメンの本質を維持しながらローカライズを成功させており、タイでの一番人気は「トムヤムチャーシュー麺」(108バーツ)だ。

 「たこ焼き」(95バーツ)は、タイの屋台で売られる甘いおやつ「カノム・クロック」と形状・食感が似ていることから「売れる」と判断し、約20年前にタイ独自でメニューに加えた。狙い通り、長らく人気のサイドメニューとなっている。

20240223thb001B004.jpg(「野菜ラーメン」みそ(左)と、一番人気の「トムヤムチャーシュー麺」。サイドメニューの「たこ焼き」も人気=2月、タイ・バンコク、NNA撮影)

■黒字化に5年以上


 清治氏は、手頃な価格は一定規模の店舗数と客数がなければ保てないと話す。当初から多店舗展開を見据え、1号店の段階から、セントラルキッチン(食材加工・調理拠点)をバンコク北郊パトゥムタニ県に設けた。現在は同県に2カ所あるセントラルキッチンから、全土の159店に食材を運んでいる。

 タイ事業の単年黒字化には67年を要した。タイ経済は首都一極集中で地方は人口も所得水準も異なるため、地方の一部店舗では「採算性の厳しいところもある」。清治氏は、現在も全店が黒字なわけではないと話した。

■年10店追加が目標


 清治氏によると、「アフターコロナ」のタイ外食産業は好調だ。8番も上り調子で、23年の客数は前年から10~15%増えた。客数の増加で、ブランド力が上がったと実感している。

 8番は常連客が多いが、ブランド力の上昇により「新規顧客が増えている」。ローカル麺との価格差が狭まりつつあることも手伝って、これまで8番の潜在顧客ではなかった層、8番を知らなかった層も、取り込んでいける可能性が出てきたと期待する。

20240223thb001B005.jpg(ハチバンの清治氏=右=と、タイのフランチャイズ事業責任者である末木竜司氏がNNAの取材に応じた=1月、タイ・パトゥムタニ、NNA撮影)

 フランチャイズ契約を結ぶパートナー企業とともに、毎年約10店を追加する目標を掲げる。所得の上昇を追い風に「今後も地方で店舗を増やせる」と清治氏。これまでの出店はほぼ100%ショッピングモール入居型だが、モール以外の立地での出店も模索していくと意気込んだ。(NNA)

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