日本のシーフード、味わって ジェトロがマレーシアで試食イベント NNA
2024.02.05
日本貿易振興機構(ジェトロ)は1月26~28日、マレーシアの首都クアラルンプールの商業施設「ららぽーとBBCC」で日本産水産物の消費拡大に向けた試食提供イベントを開催した。シーフードの需要が伸びる春節(旧正月)を前に、地場の大手水産物輸入業者と提携し、生マグロやホタテなど現地で人気の高い食材をアピール。日本食にとどまらない新たな需要の開拓を目指す。
同イベントはジェトロ・クアラルンプール事務所が主催し、日本産水産品の輸入を手がける地場企業センドイチ・シーフードのほか、ららぽーとBBCC内の日本食店3店舗などが協力した。
(ジェトロ・クアラルンプール事務所は、日本産水産物の消費拡大に向けた試食提供イベントを開催した=26日、クアラルンプール、NNA撮影)
イベントブースでは、日本産のホタテ、マグロ、ハマチ、カキ、サバを用意し、日本産水産品に関する簡単なクイズに答えた人全員に無料で提供した。マグロは愛媛県宇和島産の本マグロで、開催初日の26日に解体ショーも行った。会場での試食販売とは別に、食品販売の電子商取引(EC)サイトと小売店を運営する「モチヤ・ファインフーズ」とも提携し、オンラインショップでの販促も図る。
日本産水産物の主力消費層である華人系の間では、春節につきものの料理「イーサン(魚生)」にサーモンなどの刺し身を乗せて食べる習慣がある。ジェトロによると、そうした機会に日本産品を取り入れてもらうため、この時期のイベント開催となった。試食で提供した品目は、水産物輸入業者のセンドイチ側が地元消費者に人気の高いものを選んだという。
■農水産品の輸出額、5年で3倍超に
ジェトロによると、日本からマレーシアへの農林水産品・食品の輸出額はこの5年で3倍以上に増え、2022年には輸出額上位20カ国・地域の中で最大の伸び率を記録した。マレーシアの1人当たり国内総生産(GDP)は東南アジア諸国連合(ASEAN)でシンガポールとブルネイに次ぎ高く、国民の購買力も高まっている。日本食および日本産水産品の市場拡大が期待される市場だ。
新型コロナウイルス禍で国境が閉ざされていた中、マレーシアではクアラルンプールなどの都市部を中心に、予算に応じてシェフのおすすめ食材を用いたコース料理を提供する「OMAKASE(おまかせ)」スタイルの高級レストランが数多く登場。日本産水産物の消費拡大に一役買ったとみられる。ただ、海外旅行の解禁とともに日本に向かう人も増え、一時は乱立気味だったこうした業態も、価格と品質が見合わない店を中心に淘汰(とうた)が始まっているという指摘もある。
また、昨年には東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴う中国の日本産水産物の輸入停止を受けて、華人系が人口の約2割を占めるマレーシアでも日本産品への風当たりが強まった。
ただ、ジェトロ・クアラルンプール事務所の高野光一所長によると、近ごろでは現地の消費者の間で原発処理水が話題に上ることは少なくなっており、日本産水産物の需要も回復に向かっているという。(写真上:ジェトロ・クアラルンプール事務所の高野所長=右から3人目、26日、クアラルンプール、NNA撮影)
26日に行われた開会イベントで会場を訪れていた華人系の夫婦も、原発処理水の問題は認識していたが「気にしたことはなかった」と明るく話し、試食で提供された刺し身を楽しんでいた。
高野所長は、日本食店だけでなく、高価格帯の欧州料理店でも日本産水産物の活用が広まっていると指摘。今回タッグを組んだ水産物輸入業者のセンドイチは、日本食店だけでなく中華料理店など約400店を取引先に持つことから、地元消費者による認知向上に向けて新たな販路の開拓を目指していくと話した。(NNA)
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