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ハラル牛肉市場、競争激化 日鉄物産、マレーシアで価格面の強み生かす  NNA

2024.01.18

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 マレーシアで、イスラム教の戒律に従っていることを示す「ハラル」認証を取得した高級牛肉市場の競争が激化している。中間層の拡大とともに高級ハラル牛肉を取り扱うレストランが増加しており、ハラル和牛に加え、韓国産のハラル「韓牛」も市場参入しているためだ。2年前にマレーシアのハラル牛肉市場に参入した日鉄物産のマレーシア法人NSTトレーディング・マレーシアは、価格面で差別化を図った牛肉で勝負するという。同社幹部に話を聞いた。

 NSTトレーディング・マレーシアは、2021年にマレーシアに拠点を構え、ハラル牛肉の輸入や販売を開始した。輸入元は日本とオーストラリア。和牛やオーストラリア産牛肉を取り扱い、スーパーマーケットのほか、焼き肉やしゃぶしゃぶなどを提供する日系のレストラン、中華料理店に肉を卸す。(写真上:NSTトレーディング・マレーシアで取り扱っている高級ハラル牛肉、NNA撮影)

 NSTトレーディング・マレーシアの山本栄司ゼネラルマネジャー(食糧部門)によると、マレーシアの高級ハラル牛肉市場は競争が激化している。中間層の拡大を受けた高級レストランの増加が背景にある。首都クアラルンプール周辺には現在、日系焼き肉店が50店ほどあり、5年前の約20店の2倍以上に増えた。

 マレーシアは10年に日本で牛、豚などの口蹄疫(こうていえき)感染が確認されたことを受け、日本産牛肉の輸入を禁止した。日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所によると、マレーシアのハラルに対応することを要件に、17年11月から輸入が再開された経緯がある。それ以降、日本産ハラル牛肉のマレーシアへの輸出は拡大してきた。19年に3億円だった輸出額は、22年には約4.5倍の13億5000万円に達した。現在は、クアラルンプールやジョホール州、ペナン州など都市部が消費の中心地となっているが、人口の約6割を占めるマレー系の所得増加を背景に、今後は他の地方都市での需要拡大も見込まれている。

 山本氏によると、こうした市場の変化を受けて、日本以外からの牛肉の取引も拡大しているという。ハラル韓牛は昨年、マレーシアへの輸出が開始された。高級路線の韓国焼き肉店で提供が始まっており、ホルモンやタンなど内臓の部位が既に市場で存在感を高めている。また、韓国人が多く住むエリアの精肉店で小売りに乗り出している。

 一方、ハラル和牛市場には、マレーシア人が営む個人輸入業者が既に多く参入している。中には輸入から加工、卸売り、小売りなどを全て自社で担い、卸先に日本の焼き肉店などをまねた飲食店を展開させるケースがあり、間接的な競合となっているという。

 さらに、密輸の問題も以前からある。山本氏は「周辺国を経由して輸入されており、データがないため割合は不明瞭だが、高級ハラル牛肉市場に少なからず影響を与えている。正規輸入品よりも2割程度安いこともある」と指摘する。政府による大規模な取り締まりも行われているが、時間がたつと再び増えてしまい、撲滅が難しい状況となっている。

 こういった環境の中で、NSTトレーディング・マレーシアは、価格面などで勝負する方針だ。具体的にはマレーシアで取り扱っているハラル牛肉を他国向けと同時買い付けし、商品ごとに価格面で柔軟性を持たせる。これにより、値段が下げられ、小売店やレストランに価格面でメリットを提供できるという。

 また、競合となる個人輸入業者は水産物や青果などさまざまな商品を取り扱っている場合があり、牛肉の仕入れに労力をかけられないほか、牛肉に関する専門知識を豊富に持っていないことが多いと指摘。「当社はハラル牛肉に特化した知識を持つことも強みだ」と述べた。

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(山本氏は「経済成長とともにマレー系の中間層を中心に高級なハラル牛肉の市場は拡大する」と話す=23年11月、クアラルンプール、NNA撮影)

■今後は外食産業向けに特化


 山本氏は、今後について、消費者の反応が分かりやすい外食産業向けの販売に特化していく方針を示す。

 特に、飲食店ごとのニーズに合わせたサービス提供に注力する。商品は、協力工場と組み、牛肉を店ごとに使いやすい大きさや形で提供。また、納品時には、温度帯を工夫することで牛肉の鮮度を保ちつつ、凍らせず、すぐに調理できる状態で届けられるようにする。

 山本氏は、経済成長とともに今後も、マレー系の中間層を中心に高級ハラル牛肉の市場は拡大すると強調。「マレーシアのハラル牛肉市場で地位を確立し、中東への輸出なども視野に入れている」と話す。

 マレーシアでは、NSTトレーディング・マレーシアのほか、日本食の輸入業者であるJMGトレーディング、同業のドカ(Doka)なども、ハラル和牛を輸入・販売している。

 ジェトロ・クアラルンプール事務所の都築佑樹ディレクターとリム・イエンイー氏は、日本産ハラル牛肉は産地とブランドごとの特色、環境に配慮した製造過程やトレーサビリティー(生産履歴の追跡)など、外食産業の中でもレストランが重視する食材のストーリーを打ち出しやすい点が優位性だと指摘する。

 一方で、ハラルに対応した食肉処理が可能な日本国内の施設は現在、にし阿波ビーフ(徳島県三好郡)と三田食肉センター(神戸市)の2カ所のみとなっていることから、「今後の需要拡大に対応するためには、日本側の輸出施設を増やすことも重要だ」との見解を示した。(NNA 笹沼帆奈望)

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