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シンガポールのウマミ、培養魚肉を世界に(下)  大手と提携し日本市場模索  NNA

2023.12.29

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 培養肉を開発するシンガポールのウマミ・バイオワークスは今年8月、日本の食品大手マルハニチロとの協業を発表した。日本市場での機会を探りつつ、積極的に企業との連携を進めようとしている。創業者であるミヒル・ペルシャド最高経営責任者(CEO)に、日本への進出状況や培養肉に関する日本市場の今後の動きについて聞いた。(写真:ウマミ・バイオワークスは日本企業との協業を進めている=写真は同社研究施設、同社提供)

 ――マルハニチロと協業に至った背景は。

 新型コロナウイルス禍の収束後に、マルハニチロなど複数の日本企業がイベントでシンガポールを訪問したのがきっかけだ。今年の春節(旧正月)の時期には、当社が日本で企業訪問をした際にマルハニチロも訪ねた。

 同社は20~30年後を見据え、水産物製品の新たな進路を模索している。持続可能な海洋水産資源の確保と消費需要との間にはギャップがあり、それを埋める新たな技術を導入したいという考えを持っている。そうした文化を持つ企業との協業を当社も望んでおり、すぐに共同で事業を行うことで合意した。

 マルハニチロとは長期的な関係を築きたいと考えており、自社の株式を保有してもらっている。ただ保有数は少ないため当社の経営には直接関与していない。

 ――協業の状況は。

 研究者らが相互に行き来しながら研究を進めている。国境を越えて魚の細胞を持ち運ぶのは容易ではないからだ。まずは共同で製品開発に注力する。細胞培養装置のエンジニアリング企業など、培養肉開発のエコシステムを日本国内で構築する必要もある。

 ――日本での培養肉に対する受容度をどう見るか。

 日本の政府関係者がシンガポールを訪れた際に、当社に立ち寄ったことがある。彼らは培養肉について理解を深めつつ、その必要性について真剣に考えていた。

 どのような法規制が必要かという点も考えているようだ。日本には遺伝子組み換え作物(GMO)に関する法律は施行されているが、新規食品(Novel Foods)の市場導入に関しては実質的に法的な規制がなされていない。この点に関して、日本政府は培養肉に関する法律に加え、新規食品の法規制の在り方も検討しているようだ。

 日本のある国会議員と話をする機会があったが、培養肉産業を本気で強化しようとしている。日本はハイテク産業国であり、かつ最高水準の水産物を提供していることが、次世代海産物を日本で生産する上でプラスとなる。

 ――法制化には時間がかかるのでは。

 遺伝子組み換え作物の場合よりも早くできるのではないか。培養肉は遺伝子を操作しておらず、動物の細胞をそのまま使用している。バイオ技術は、既に多くの面でバイオ医療事業者により安全性が証明されている。蓄積されたデータがあることが、遺伝子組み換え作物とは違う点だ。

 ――新たな協業など今後の計画は。

 企業名は明かせないが、マルハニチロ以外にも日本の大手食品会社と話を進めている。米国や韓国にも足を運び、企業の担当者と話をしたり、シンポジウムなどにも出席したりしている。海産物市場という面では北米よりもアジアの方が圧倒的に大きく、特に日本に注力していきたいと考えている。(聞き手:大友賢)

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