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失われていく水田の維持にまず米食  小視曽四郎 農政ジャーナリスト  連載「グリーン&ブルー」

2023.12.04

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失われていく水田の維持にまず米食  小視曽四郎 農政ジャーナリスト  連載「グリーン&ブルー」の写真

 猛暑で災害級の打撃を受けた米産地の表情がさえない中、米の転作から畑作の本作に切り替える農家が増えている。比較的高額な助成が効いてか、政府の畑地化促進事業に手を挙げる例が相次ぐ。

 この事業でどの程度の申請があるのか、畑地化目標をどう設定しているかだが、農林水産省は「23年産は3万5千ヘクタールになる」と予想。政府ではこの動きに2023年度補正予算で昨年の250億円に次いで、750億円を充てる。合わせると実に1千億円。昨年は予想を上回る申請で対応できず、多くが保留となった。だが、従来の転作奨励金に当たる水田活用の直接支払い交付金約3千億円の削減につながり、その削減に執念を燃やす財務省などが大きなチャンスとばかり、財源づくりを支援しているようだ。

 畑地化には、JAグループも主食用米の需要が毎年10万トン程度減少する現状から農地維持のためには他作物への大規模な転換はやむなし、の立場。同グループは「21~30年の間に(米の生産面積の)21万4千ヘクタール分が失われる」と試算。これは22年産主食用米の2割弱に当たる。

 農水省も「食料・農業・農村基本法」検証会合の中で「40年度には20年度比3割減となる493万トンに米需要が落ち込む」とし、20年度を例に水田面積225万ヘクタールに対し必要面積は137万ヘクタールと「水田余り」を挙げた経過がある。流れでは40年度に100万ヘクタール以上の転作が必要で、自給率向上のため麦・大豆などへの転換を促してきた。

 ただ、畑地化には両手を挙げて賛成しない現場の空気や識者、政治家もある。資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫氏は「優れた生産装置である水田の力を弱め、農業用水、水利も危うくする」と危惧。国民民主党の舟山康江農林水産調査会長も「水田の畑地化は短絡的に進めるべきではない」「水稲は日本の気候に適している。不測の事態に水田がなければどうなるか」と安易な畑地化を懸念する。実際、東北などの農家には畑地化事業を「田んぼと別れる〝手切れ金〟に見える」という人も。確かに米はまだ、日本人の命を支える主役なのである。

 ではその主役が今後も主役であるためにはどうするか。ずばり、日本人が食べる米の量をできるだけ減らさないことに尽きるだろう。米消費がさらに減れば水田を維持できず、水田からのさまざまな恩恵をも失うことになる。

 22年度国民1人・1年あたりの米消費量は前年より500グラム減って50.9キロ。民間シンクタンク予想では「30年までの間に米と小麦で主食が逆転の可能性」も挙がる。食料安保を言う割には、食料安保の柱の米食を国民自ら細らせている現実がある。「食いたいものを食って何が悪い」との声はあるだろうが、畑作促進の一方で、まずは米を食べ、拡大とまではいかずも米消費の維持を改めて考えるべき時ではないか。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年11月20日号掲載)

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