耕畜連携を主流に フォーラム「食料安保障と地域資源循環の強化に向けて」開催 農中総研
2023.09.14

農林中金総合研究所は9月14日、フォーラム「食料安全保障と地域資源循環の強化に向けて~現場の実践から考える次世代耕畜連携のあり方とは~」をオンラインで開催し、米麦など耕種作物と酪農など畜産業の連携を深めることの意義や重要性を確認した。600人超が参加した。
フォーラムでは、農事組合法人 元気ファーム20(前橋市)の関根正敏代表理事(左)が「米麦二毛作に加えて飼料をつくることで、年間を通じて作業を平準化でき、農機や施設の稼働率を上げ、収入を安定できる」と飼料生産の長所を説明した。
元気ファームで生産される飼料を利用している須藤牧場(同)の須藤晃代表(右)は「嫌気性発酵堆肥にこだわっている」と述べ、家畜の糞尿の臭いがしないように、近くの住宅街への配慮を紹介した。また、当初は飼料生産に対する理解が進まず、飼料専用種の稲の普及が遅れるなど導入時の課題も指摘した。
新規就農して、地域の農家と連携して飼料用米の生産や水田の草地化、水田放牧に取り組んでいるクローバーファーム(富山県高岡市)の青沼光代表(左)は、「水田を草地化しようと提案すると、以前は抵抗があったが、最近は理解が進んでいる」と述べ、水田という形で農地を維持するのが困難な現状を説明した。耕畜連携の意義について「物質循環の中心に農業や畜産業を位置付けるのが中長期的な目標だ」と指摘した。
全国酪農業協同組合連合会の丹戸靖企画管理部長(右)は「酪農の廃業が相次いでいるが、裏返せば酪農の経験者というリソース(人的資源)が蓄積されており、地域のあらゆる人を巻き込む必要がある」とコメント、地域の人材活用の重要性を指摘した。
同研究所の平澤明彦理事研究員が「米の需要が減る中、餌をいかにつくるのか、やるべき方向はみえている。品目別の所得向上や生産性の向上だけでなく、米政策の枠を超えて耕畜連携を主流にするべきだ」とまとめた。
皆川芳嗣同総研理事長が「機能別に分業して価格メカニズムで調整してきたが、環境は大きく変化している。耕畜連携は大きな可能性を秘めている。幅広く支援して育てていけば、農業と国民の距離を近づけることにもなる」と総括した。
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