拡大続ける宅配水市場 競争激化とコスト高で成長は鈍化 徳永優矢野経済研究所フードサイエンスユニッ研究員
2023.09.13

ウォーターサーバーとミネラルウォーターがセットで家庭や事業所などに配達される宅配水の市場が、順調に拡大している。宅配水(写真はイメージ)は、東日本大震災の発生を契機として注目され、2022年度の市場規模は末端金額(エンドユーザ販売金額)ベースで前年度比102.3%の1750億円でと増加傾向が続く。
顧客件数は増加傾向となったものの、個人向けの1件当たりの水の消費量は、物価高騰によるボトルの買い控えや、コロナ禍による「巣ごもり需要」の反動で、減少傾向となる宅配水供給企業が多い。また、物価高騰による支出抑制の影響を大きく受け、既存顧客の解約が増えている。
近年は、新規顧客の獲得ペースの鈍化や配送料などコストの上昇、競合する商材であるPOU(Point Of Use)と呼ばれる浄水型のウォーターサーバーや、給水型ウォーターサーバー市場の急成長など、市場を取り巻く環境は厳しさを増している。さらに、宅配水市場への新規参入企業もあり、競争の激化で市場は飽和状態に近づいている。今後も、POUなど競合市場の拡大、宅配料金やボトル価格の値上げにより、宅配水の消費の減少は続きそうだ。
特に配送面では、効率を上げるため特定のエリアへの注力や、新規顧客の獲得、既存顧客を維持するためのコストの見直しが喫緊の課題となっている。厳しい環境となる中、宅配水と給水型サーバー双方の事業展開を検討する企業も出て来た。また、新規顧客の開拓先として、地方都市など伸びしろが多いエリアやシニア層や若年層の開拓など顧客の深耕を進める動きもある。
さらに、顧客開拓にあたっては、ユーザーが抱えるスペースに対する不満に対し、スリムさを訴求してボトルをサーバー内に格納できる機種が投入されるなど、顧客満足度を高める工夫をする企業もある。
飽和状態が近づき、厳しい環境が強まる宅配水市場だが、積極的な新規顧客開拓や、消費者が「水」を購入する際の選択肢の一つとして定着していることから、成長率は鈍化しながらも1桁台で市場の拡大が続くと予想される。
【宅配水の市場規模推移(末端金額ベース)】
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