暮らす

「サーフアイランド」東京・新島  小島愛之助 日本離島センター専務理事  連載「よんななエコノミー」

2023.09.11

ツイート

「サーフアイランド」東京・新島  小島愛之助 日本離島センター専務理事  連載「よんななエコノミー」の写真

 東京から南に約160キロ、伊豆諸島では北から数えて3番目の位置にあるのが新島である。約8キロ離れた式根島とともに、東京都新島村に属している。東京からの交通アクセスは3種類に分かれている。まず竹芝桟橋を夜10時過ぎに出る東海汽船の大型客船は約8時間半で新島まで運んでくれる。竹芝桟橋からはジェットフォイルも就航しており、朝8時半の出発で約2時間半の船旅である。さらに調布飛行場からは新中央航空のプロペラ機が14便飛んでおり、新島まで約40分で行くことができる。

 新島の観光スポットをいくつか紹介しよう。まず何といっても、伊豆諸島で最も長く美しいといわれる羽伏浦海岸である。新東京百景にも選ばれており、白い砂浜と青色の海が絶妙なコントラストを描く海岸が約7キロ続いている。ハワイのノースショアと並び称される世界的にも有名なサーフスポットであり、過去には世界大会も開催されるなど、多くのサーファーに愛されている。

 次に紹介したいのが、湯の浜露天温泉である。島の特産品であるコーガ石を使用した、古代ギリシャのパルテノン神殿風の建築が人気を集めている。海岸の高台に建てられているため、天気が良ければ式根島などの島々を眺めることができる。無料の更衣室やシャワーもあり、24時間稼働で入浴料が無料なので、夕陽や星空も楽しむことができる。

 湯の浜露天温泉の素材であるコーガ石は、イタリアのリパリ島と新島でしか採掘できないという流紋岩質の貴重な石である。この石で作られた巨石の群像モヤイ像が新島の所々でみられる。イースター島のモアイ像がモデルであるが、新島の方言で「力を合わせる、助け合う」という意味の「もやう」が語源であるともいわれる。ちなみに渋谷駅の待ち合わせスポットで有名なモヤイ像も、新島村から渋谷区に寄贈されたものだ。

 1998年にコーガ石を原料としたガラス製品の研究・開発を目的として造られた施設が新島ガラスアートセンターである。光沢と透明感のあるオリーブグリーンのガラスアートの制作を体験することが可能な上、食器や花瓶などを購入することもできる。

 さて新島には、江戸時代、政治犯を中心とした罪人が多く流されてきており、島の住民たちは彼らに温かく接したといわれている。その罪人の代表格が竹居安五郎である。侠客の清水次郎長こと山本長五郎の仇敵だった黒駒勝蔵の兄貴分としても有名だが、実は新島からの島抜け(脱出)に成功したという貴重な存在なのである。18536月、ペリーの黒船来航で代官所が忙殺されていたとはいえ、記録的な出来事である。仮に島抜けが成功していなかったとしたら、幕末の侠客伝説も変わっていたのではないだろうか。

 新島の味としては本来「くさや」であろうが、新島野菜の一つである「島らっきょう」もお勧めしたい。主成分であるアリシンが体内でビタミンB1の吸収を助け、免疫力を高めるという優れモノ。先日、この島らっきょうをピクルスにしたものを食してみたが、絶品であった。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年8月28日号掲載)

最新記事