「富山湾しろえび倶楽部」漁師たちの挑戦 中川めぐみ ウオー代表取締役 連載「グリーン&ブルー」
2023.07.03
「富山湾しろえび倶楽部」。あの有名なお笑いトリオと同じく、個性あふれる3人組が"倶楽部"という名のチームを2020年に結成しました。
お笑いトリオと違うのは、3人が現役の漁師である点。そして目的は「持続可能な漁業を発信し、持続可能な社会に貢献する」ことで、人々に笑顔を届けようとしています。活動拠点は、富山県・新湊。その名の通り「白エビ」という珍しいエビを取っています。
そんな白エビは水揚げ直後の透明感ある淡いピンクの身が特徴で、キラキラと輝く美しさから〝富山湾の宝石〟とも呼ばれます。時間がたつと身の色は白く変化しますが、その姿もまた美しく、高級料亭では丁寧に殻をむいた刺し身などが喜ばれています。
白エビは日本各地に生息していますが、まとまった量が取れるのは富山県の新湊ともう1カ所だけ。希少性もあって高値が付きやすく、ブランド品として地域の飲食店や宿泊施設、お土産屋などでも重宝されているのです。
そうなると、「どんどん取って、どんどんもうけよう!」なんて思うのが普通の心理。しかし自身の利益よりも次の世代を思い、1970年代から未来を見つめた活動を始めたのが、しろえび倶楽部メンバーの父や祖父にあたる先輩漁師たちです。彼らは「プール制」という革新的な発明をしました。
プール制とは、新湊に所属する白エビ漁船を全部でひとつのチームとみなし、全船の漁獲を集約。その後、売り上げを全船で均等に分配する仕組みのこと。これによって「人より多く取って稼ぎたい」という心理が芽生えることを抑え、全体の取りすぎも自然に抑えることを実現しました。
競争よりも協力を重視する仕組みのおかげで、技術の共有・伝承が活発に行われるように。また、獲りすぎや海の異変(通常より網に入る白エビのサイズが小さいなど)を感じた際には漁を控えるといった調整も可能となり、より広く長い視点で海と付き合えるようになったのです。
そんな素晴らしい取り組みを引き継ぐ漁師3人組が「さらなる持続可能な漁業・社会」を目指して、さまざまな人や業界を巻き込もうとスタートしたのが、しろえび倶楽部という"参加"を促す活動。
PRや観光船など多様なチャレンジを始めたことで、各所に〝関わりしろ〟ができ、メディアや観光、教育、アパレルなど彼ら自身も想像していなかった幅広いコラボレーションが生まれています。
現在では海のエコラベル(海洋の自然環境や水産資源を守って漁獲された水産物に与えられる認証)取得にも力を入れており、これを達成できればより広く、世界にも目を向けることができます。
世代を超えてチャレンジを続ける新湊の漁師たち。これからも白エビ漁が持続可能となるよう、私も「食べる」という参加方法で応援させていただきます!
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年6月19日号掲載)
最新記事
-
農業経営体、4.7%減 週間ニュースダイジェスト(6月25日~7月1...
▼移住支援金、支給迅速化(6月26日) 政府は、地方移住を後押しする「移住支...
-
「富山湾しろえび倶楽部」漁師たちの挑戦 中川めぐみ ウオー代表取締役...
「富山湾しろえび倶楽部」。あの有名なお笑いトリオと同じく、個性あふれる3人組が...
-
「窓」がつくる東京・利島の交流プラットフォームブース 沼尾波子 東...
東京・竹芝で先月13、14日、「東京愛らんどフェア島じまん2023」が開かれた...
-
良食生活を活性食に 安武郁子 食育実践ジャーナリスト 連載「口福の...
50歳以上が半分以上を占める日本。かくいう私も50代です。「食育」は、この50...
-
認定品ガイドブックをリニューアル 高岡市
高岡商工会議所(富山県高岡市)は名称・原材料・意匠など高岡市を連想する要素を持...
-
CPF、宇宙開発会社と飛行士用の食品開発 タイ NNA
タイの食品最大手チャロン・ポカパン・フーズ(CPF、CPフーズ)は、米宇宙開発...
-
鳥インフル、清浄化宣言 週間ニュースダイジェスト(6月18日~6月2...
▼鳥インフル、清浄化宣言(6月20日) 農林水産省は昨年10月以降に26道県...
-
3年トラフグ、沼島でも 小島愛之助 日本離島センター専務理事 連載...
沼島は、淡路島の南4.6キロの紀伊水道北西部に浮かぶ離島であり、兵庫県南あわじ...
-
目指せエンタメ県!長崎の基幹産業に 陣内純英 西海みずき信用組合理事...
先月、プロバスケットボールチーム、長崎ヴェルカがB1昇格を決めた。そのクラブの...
-
挑戦を続ける女性農業者たち 青山浩子 新潟食料農業大学准教授 連載...
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた当時、6次産業化に取り組む農家への...